その前に言葉の定義をしておきましょう。これまでWeb3で提供されるものを「サービス」と総称していましたが、サービスとは提供される無形の財のことであり、実際にはプロトコルやデータ、ビジネスのロジック、インターフェイスなどが組み合わさった状態で提供されるものです。ユーザーはインターフェイスを持つアプリケーションを通じてそのサービスを受けることになります。

Web 2.0ではプロトコルといえばインターネットの通信の基盤となるTCP/IPやウェブの通信手順のHTTPといったもので、重要ではありますが、価値を内在できるものではありませんでした。その代わりに、その上で稼働するアプリケーションに価値が集中しました。

Web 2.0の富の源泉はユーザーに関するデータであり、Web 2.0企業は独自にユーザーに関するデータを自ら収集して管理し、それを使ったアプリケーションロジックを開発して、独自のインターフェイスでラップしてユーザーに提供しています。アプリケーションは独自で集めたデータからインターフェイスまでを含む概念でした。これによってWeb 2.0企業は大きな利益を得ていたのです。

一方で、Web3では、ユーザーのデータはオープンな形式でブロックチェーン上に保存されます。そして、それは誰もがアクセスできる共有データ層として存在しています。したがって、その上でロジックや独自のインターフェイスをラップしてアプリケーションを作っても、データを囲い込めないので競争力を持ちません。

それよりも、ロジックとなる機能部分をオープンなプロトコルとして集中して開発し、相互につながるような競争力を持ってモジュール化して設計したほうが開発者のインセンティブが働きます。なぜなら、プロトコルは独自のトークンを発行するからです。プロトコルが利用されればされるほどそのトークンに注目が集まり、トークンの値上がりが起こるため、プロトコルの価値は向上します。