イチゴ農家や植物工場の担当者の話を聞く機会が増えていくうちに、市川氏は工場でイチゴを栽培するにあたって「受粉の自動化」が課題になっていることを知った。ロボットを活用して授粉を自動化できないか。2019年には授粉にも対応する、改良版のプロトタイプが完成した。

2020年8月には東大IPCが運営するインキュベーションプログラムに採択され、同年12月には5000万円の資金調達も実施。社内の研究施設内で試験機の開発や実証試験を重ね、その環境下ではミツバチや人間を超える精度での授粉にも成功しているという。

今後は他社工場での実証実験や量産試作機の研究開発も見据えており、そのために新たな資金調達を実施した。

また山口県周南市の徳山工業高等専門学校と提携し、高専内に事業所を設置して共同研究も始める。この取り組みでは共同で授粉アタッチメントの開発などだけでなく、高専の学生に対して教育的なサポートも提供していく。「都心部に比べて地方では新しい技術情報に触れる機会や学んだスキルを活かす場所が限られているため、そのような機会を増やすような取り組みにすることで貢献したい」(市川氏)という。

HarvestXとしてはイチゴの授粉から収穫までの自動化を実現させた後、他社との協業も視野に入れながら「イチゴの完全自動栽培」に取り組む計画。ゆくゆくはイチゴ以外の果菜類の自動栽培も目指していく。

記事内にもあるように「イチゴ好き」であることが事業領域を決めるきっかけにもなったという市川氏。SNSのプロフィール画像でもイチゴのかぶり物をかぶっている
記事内にもあるように「イチゴ好き」であることが事業領域を決めるきっかけにもなったという市川氏。SNSのプロフィール画像でもイチゴのかぶり物をかぶっている