時代を先取りしすぎてしまった『セカンドライフ』の功罪

2003年にアメリカのリンデンラボがリリースした『セカンドライフ』については、すでに言及しました。2005年に『セカンドライフ』は一世を風靡し、世界中の企業が参入して社会現象を引き起こしています。日本企業の中ではトヨタ自動車や日産自動車が参入し、バーチャル空間に自動車の自動販売機までセッティングされたものです。

ただしハイスペックのPCを使い、高速通信でログインしなければ、アバターがカクカク動いたりフリーズしたりしてしまいます。みんながこぞってログインすると、『セカンドライフ』全体の動きが重くなりました。時代を先取りしすぎたせいで、『セカンドライフ』はインフラにまで成長することなく廃れています。

この一事をもって「『セカンドライフ』は悪い見本だ」と結論づけるのは早計です。その後『セカンドライフ』は「リンデンドル」という仮想通貨を作りました。『セカンドライフ』の中で通用するこの仮想通貨は、固定制ではなく変動制です。

しかも面白いことに、『セカンドライフ』内でリンデンドルと本物のアメリカドルを交換できます。このサービスによって、『セカンドライフ』はマネタイズしてちゃんと儲かっているのです。『セカンドライフ』では、ユーザーが家や服を自分でデザインして、誰かに売ることもできました。

個人がデザインした3Dアセットの著作権がサービス内で保障されていて、販売額に応じて報酬が自動的に分配される仕組みが存在していました。このテクノロジーは、仮想通貨が後年導入したブロックチェーンやNFTの原型そのものです。

もし『セカンドライフ』が今のタイミングでサービスをリリースしていれば、メタバース業界をいち早く席巻していたでしょう。登場するのがあと20年遅ければ、『セカンドライフ』は巨万の富を生み出していたはずです。その『セカンドライフ』の失敗が反面教師となってくれたおかげで、『Fortnite』や『Apex Legends』など3D系のサービスは同じ誤ちを繰り返さずに済みました。

今は端末のスペックも通信速度も、20年前とは比較にならないほど爆上がりしていま す。テクノロジー環境が変わった今、「メタバースなんて『セカンドライフ』の二番煎 じじゃん」と冷笑しないほうがいいと私は思うのです。

メタバース革命の本質は「インターネットの3次元化」

メタバース革命とは、単なるVR技術の革命ではありません。

①コンピュータの性能、②通信速度、③3DCG技術という3つの進化が相まった「インターネットの3次元化」の革命です。ここで、「VR」「3DCG」「メタバース」とややこしい用語がたくさん出てきているので、言葉の意味を一度整理しておきたいと思います。