その騒動のあまりの大きさに、開発会社であるポリフォニー・デジタルはアップデート実施の翌週に、異例の謝罪文を掲載することになった。

同社がユーザーに対する火消しとして使った対応が、「謝罪文の公開前にソフトを購入している人のアカウントには、1億Crをチャージする」というもの。有料でCrを購入するとしたら、約1100円相当だ。この対応により、SNS上での騒動はやや沈静化したようではあるが、ユーザーレビューは記事執筆時点では回復する兆しすら見られない。

騒動の問題点は、「顧客との意識のズレ」

これがグランツーリスモ7で起きた騒動の全容だ。ソフト自体の完成度は申し分ないのに、このような騒動が起きた理由と開発・販売側が改善すべき点について、少し考えてみたいと思う。

起きた事象としては、以下の3つに集約される。

(1)ソフト発売
(2)アップデート&山内氏のメッセージ公開
(3)謝罪文の公開

まず、ソフト発売時点(1)では課金については特に問題視されていなかった。ゲーム内クレジットを課金で購入できる仕組みについても、多くのユーザーが受け入れていた。レースの賞金は決して多くはなかったが、少しでも効率的に賞金を稼げる方法を模索し、SNSで情報共有。全世界のプレーヤーが集合知の力で見つけた「GT Cup Gr.4」という、賞金額が多いレースの周回をしていた。

ところがメーカーが「いろんな世界のレースに参加してほしいのに、特定のレースだけを周回しているユーザーがいる」と、そんな状況に気付いたため、該当レースの賞金額を下方修正。これによりユーザーは「このゲームはソフト代のほかに、ユーザーに課金させるつもりだ」と激昂した。そこへ油を注ぐかのように、山内代表からの「課金なしでも楽しめます」発言が加わり、不満が噴出した。

ユーザーたちの投稿内容を見る限り、「賞金効率がいいレース」をそのままにしておけば、こんな事態には陥らなかったはずだ。開発側の考えとしてはおそらく「自分たちのチェック漏れの修正」レベルの感覚だったのかもしれないが、ユーザーが自分たちで探し、発見し、世界中の同志たちと共有した攻略情報を無効化したことは、開発側への大きな不信感につながった。この開発側と消費者側との意識のズレが、トラブルの最大原因だったというのが私の考えだ。

もちろん、ゲームソフトの開発・販売は利益を得るためのビジネスだ。1円でも多くの利益を得ることは、ゲームメーカー側の目的のひとつである。前作『グランツーリスモSPORT』では1台153~509円でクルマを有料販売した成功事例があるので、そうした追加収入に期待するのも理解はできる。しかし、前作では509円で買えていたクルマを3960円へ値上げしたのは、値上げ幅としては大きすぎると感じる。