一方で、ひとり人事の仕事は次から次へと増えていきます。確かに内定承諾をもらえたり、入社後活躍している場面を目の当たりにしたりすると、なにものにも代え難い高揚感を覚えます。またそこから「スタートアップだからもっと頑張らないと」というマインドになりがちです。ただ、睡眠時間や家族やパートナーとの時間を削ってまでやるべき仕事ではありません。

私は常日頃からLayerXで「1番目に自分の健康、2番目に家族の健康、仕事は3番目でいい」という話をしています。もちろん、候補者体験を向上したいからと即レスしたい気持ちは痛いほどわかります。たとえばパートナーが体調を崩してしまって、候補者へのレスポンスが遅れてしまう、と悩まれるシーンも有るかと思いますが、代わりの人が社内にいなければ翌日の返信でもいいと思います。

「ちょっと無理をすればなんとかなる」を積み重ねると“大きな無理”になってしまって、長く続かない。人事自身も“会社の顔”としてのプライドやモチベーションでついつい頑張れてしまうのですが、一人で無理を続けているだけではスキル面の成長も鈍化していきます。

健康面でもキャリア面でも、2人目なり、マネージャーなりを採用した方がいいと思います。経営チームも「ここまで頑張れたなら、もっといけるでしょ」「まだまだ大丈夫だろう」と過度に期待してはいけません。

先手先手でHRチームのあり方を考えておく

最後にひとり人事のキャリアについてです。ひとり人事としてさまざまな業務を経験すると、自身のキャリアについて考える機会も増えると思います。

採用に注力していく道もありますし、HRBP(経営者や事業責任者のパートナーのこと)や育成・評価、労務などの道も視野に入ってきます。「自分の得意なものは何か」「次に得たい経験は何か」に向き合い、会社が成長したときに注力したいキャリアを決めておき、自分のチームの採用に力を入れていく。もし、自分が育成に力を注ぎたいのであれば、今後採用や労務に強い人を探せばいいわけです。

チーム化していくにあたって大事なのは「自分より優秀な人を採用せよ」という鉄則です。実はLayerXのHRチームは5人まで人数が増えました。私以外の4人は、いずれも私には持っていない得意分野を持っています。

ひとり人事だと、つい自分が体調を崩すギリギリのところで「もう1人採用したい」という話が出がちですが、もっと早い段階で動きだし、なんなら募集要項をつくっておくぐらいがいいのかもしれません。