ひとつは、経営チームと同じ目線・熱量で、採用戦略を立てることの難しさに直面するというパターンです。例えば、創業者や経営チームから「今年は30人採用したいので、来週までに採用戦略を考えておいてください」と言われたとします。

しかし、創業者のビジョンや起業したストーリーをインストールできていなければ、同じ目線・熱量で採用戦略を考えることは難しいでしょう。

大前提として、人事が語るストーリーよりも創業者が語るストーリーの方が熱量も高く、魅力的です。それにもかかわらず、採用の競争が激しい今の時代に、人事担当者だけに「じゃあ、戦略考えておいて」と丸投げされても、どうにもなりません。

もう1つが、キャリアに悩むパターンです。基本的にスタートアップのひとり人事は事業の成長フェーズであればあるほど採用業務がメインになります。上長となるであろうCEOやCFOに相談ができればいいのですが、実際は彼・彼女らに採用実務の経験がない場合がほとんどです。

友人にスカウトメッセージを打って「800万円でうちに来てよ」というアプローチをしたことはあると思いますが、専門的な採用媒体のトレンドや採用プラットフォームの選定などについて実務をやってこられた方とそうでない方の解像度には大きな開きがあります。(メルカリの小泉文明さんやラクスルの永見世央さんのように採用から組織づくりまでの実務に明るい人はとても希少です)。結果としてメンター不在となり、相談相手を探すためにTwitterで同じくひとり人事の仲間を募るようになるわけです。しかしこれでは本質的な課題解決に近づいていきません。

経営チームを巻き込み、採用の解像度を上げる

こうした問題を解決するには、どうすればいいのでしょうか。まずは、経営チームと同じ目線・熱量で、採用戦略を立てることの難しさに直面する、という悩みに対してお答えできればと思います。

採用における問題を解決するために必要なのは、「30人採用する」というような具体的な数値目標ではありません。ひとり人事の方たちが、経営チームの採用に関する理解度、解像度を上げていくことが何より重要です。

もっと言ってしまえば、経営チームが「会社にとってすごく大事なことだから、採用にはリソースの3割割いてください。人事はひとりなんだから、みんなで支えよう」と宣言できるように働きかけていく、そんな動きです。

採用は誰の仕事でしょうか? 人事だけの仕事ではなく、会社全体の仕事です。CEO、CFOをはじめとした、各責任者、つまりハイアリングマネージャーの仕事でもあるわけです。であれば、人事はもっと経営チームを巻き込んでいく必要があります。これは持論ですが、仮に社内の打ち合わせと面接の予定が被ってしまった場合、CEOのスケジュールは面接を優先すべきでしょう。ひとり人事は、決して遠慮していてはいけません。