サステナビリティトランスフォーメーション(SX)とは
経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間とりまとめ」より

SXが重視される背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大や気候変動の影響もあって企業経営を取り巻く環境の不確実性が一段と増していること、社会のサステナビリティに対する要請が強まっていることが挙げられる。

報告書は、新規事業創出やESG、SDGsへの取り組みなどにおいて、企業と投資家との間に“ギャップ”が存在すると指摘。このギャップを解消するためには「企業と投資家の間で、対話における長期の時間軸を共有することが必要」と示している。

投資家との対話を促すSXの具体的施策、DXとの違いとは

経産省の中間取りまとめでは、企業と投資家との間に横たわるギャップを解消し、質の高い対話を促すためのSXの具体的施策として、次の3つが挙げられている。

1. 企業としての強みや競争優位性、ビジネスモデルを中長期で持続化・強化するために、事業ポートフォリオの管理やイノベーション創出に向けた種植えなどの取り組みを実践すること

2. 不確実性に備え、社会のサステナビリティ(将来あるべき姿)から逆算して、企業としての稼ぐ力の持続性・成長性に対する中長期的な「リスク」と「オポチュニティ(機会)」双方を把握し、それを具体的な経営に反映させていくこと

3. 不確実性が高まる中で企業のサステナビリティを高めていくために、将来、シナリオ変更がありうることを念頭に置き、企業と投資家が1・2の観点を踏まえた対話やエンゲージメントを何度も繰り返すことにより、企業の中長期的な価値創造ストーリーを磨き上げ、企業経営のレジリエンスを高めていくこと

企業の価値創造という観点では、デジタルテクノロジーを活用したビジネス変革の取り組みであるデジタルトランスフォーメーション(DX)ももちろん、おろそかにして良いわけではない。ただしDXは、直近の環境変化に次々に対応し、競争優位性を確保することを目的とした取り組みだ。つまり、どちらかと言えば「今すぐ取り組み続けなければ、環境の変化から脱落してしまう喫緊の課題」である。

DXに加えてSXの視点を取り入れることで、企業はより長期的な視点で戦略を立てることが可能となり、将来に向けての持続的な企業と社会の存続(サステナビリティ)を目指すことができると考えればよいのではないだろうか。

カーボンニュートラルの実現を目指した経済社会システムの変革「GX」

一方のグリーントランスフォーメーション(GX)とは、カーボンニュートラル(カーボンオフセット)の実現を目指した、経済社会システム全体の変革のことを指す。

温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラル。日本政府は2020年10月、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。また、2021年4月には、2030年度の温室効果ガス排出削減目標として2013年度から46%の削減を目指すとし、さらに削減率50%に向けて挑戦するとの指針を示している。