「今まさに『クリエイターズエコノミー』と言われていますが、結局、製作者側にとって経済的に報われる仕組みができて初めて、コンテンツ、エンタメをつくる活動は継続していけます。(動画と違い)話すことのクリエイターにもうかる仕組みがなかったので、そこを一番につくりたい、という思いでいました」(井上氏)

新しいクリエイターが生まれるためには、芸能人やタレントのような「すでにIP化された人の場所」にするより、むしろ今までは光が当たっていなかった人に光が当たる場所にする必要がある──そう考えた井上氏は、Radiotalkを誰もが配信できるサービスとして公開した。

「ただ、これはインターネットの良いところでもあるのですが、誰でも配信できる場では匿名であるがゆえに、本当に輝くコンテンツがあったとしても、それがその他大勢のノイズ的なコンテンツに埋もれてしまうという課題も潜んでいます」(井上氏)

井上氏は「Radiotalkには、コンテンツ力のあるものと、気軽に自己満足のためにつくられるコンテンツの両方があっていい」という前提のもとで「場を盛り上げて輝くコンテンツをつくるには、ある程度、力のあるコンテンツが目立つようにする必要がある」と考えた。そこで最初は、リアルタイム配信ではなく、一度録音したデータを配信する収録型を採用することにした。

「最終的にはリアルタイム配信と収録型配信のどちらもできる状態を目指しつつ、最初はあえて収録の方から始めました。すると『しゃべっているところに誰かがふらりと来て、他愛もない話で終わる』ということでなく、ある程度『この10分という時間の中で、どのくらい自分がしたい表現ができるか』を突き詰めてデータをアップすることになるので、コンテンツ力が高まりやすいのです」(井上氏)

一方で「Clubhouse」や「Twitterスペース」のようなリアルタイム配信の方が、配信者とリスナーの熱量が上がりやすいことも確かだ。井上氏は「コンテンツ力を上げてから、そこについたファンに対して熱量を上げていくかたちにした」と説明する。熱量の高いものをつくって後からコンテンツ力を磨くのは難しいと考えたからだ。

コンテンツ力が磨かれ、企業案件も入るような配信者が現れるようになったタイミングで、Radiotalkはライブ配信機能を追加した。それにより、すでにコンテンツ力の高い配信者とそのファンが熱狂的に盛り上がれる場所になり、トーカーの収益化にもつながっているという。