それから約1年半。顧客に向き合いながら機能開発やコミュニケーションを続け、実績と信頼を積み重ねてきた。毎月数百社が新規で利用を開始するほどの規模になった今でも、その半数以上は既存顧客からの紹介やクチコミがきっかけだという。

ビジネス向け金融サービスの民主化へ、大型調達で事業加速

グローバルで先行する企業を見ると、法人カードから事業を始めて徐々に「多角化」の方向へと舵を切っている。

Brexは2021年にクレジットカードや支出管理、請求書支払いなど複数の機能を1つのダッシュボードに統合したサービス「Brex Premium」を発表。直近でも同社のプロダクトの基盤となる新たな支出管理プラットフォーム「Empower」の発表や、企業の財務計画の作成を支援するソフトウェア「Pry」の買収などを明らかにしている。

2019年の創業ながら3月には81億ドルの評価額で7.5億ドルを調達したRampも、機能拡張に取り組む。ソフトウェア契約料など顧客のコスト削減をサポートする交渉支援サービスのBuyerを2021年に買収。自動請求書払いの機能や、出張の予約と経費管理を効率化する「Ramp for Travel」の提供なども始めている。

この領域のスタートアップは「Spend Management(支出管理ソフトウェア)」というカテゴリーとして紹介されることも多く、まさに各社が企業の決済や支出にまつわる情報を統合管理する“金融のOS”の実現に取り組んでいるような状況だ。

UPSIDERも同様に、事業の多角化に向けて動き出している。この4月からクレディセゾンと共同で、銀行振込の支払いをクレジットカードで決済できる「支払い.com」の提供を始めた。

ベータ版の段階で数百社が登録したこのサービスも、もともとは顧客からの要望などを参考に開発したもの。UPSIDERとしては成長企業を後押しする「決済プラットフォーム」への進化を見据えており、今後もサービスの拡充を計画しているという。

「自分たちは何か特別なことをしているわけではなく、お客さんのニーズに応えているだけなんです。『安全に楽に、その上でなるべく遅く支払いたい』というニーズは多くの企業に共通します。ただ、これまでは業界の構造上の問題などで、法人カードや銀行振り込み、請求書、手形などさまざまな手段がバラバラに存在してしまっていました。その歴史をひも解いた上で、存在する課題を一つひとつ解いているのがUPSIDERだと考えています」