「当時の自分がやっていたのは、リクナビというプロダクトを『どうですか(掲載しませんか)?』と提案するだけでした。相手からしても、自分たちのことを全く理解していない人間が営業に来ても良い気分にはなりません。自分自身も『これだったら営業はいらないのではないか』と感じていました」(吉木氏)

そんな吉木氏にとって、「営業組織図」を作るようにしたことが1つの転機になった。

営業のやり方を模索する中で、緻密な営業をしている人材や強い営業チームは組織図を作っていることを知り、自身もそのために時間を割くようにした。成果が出るようになった要因はいくつかあるものの、営業組織図の存在は大きかったという。

吉木氏のいう組織図とは、マンガやドラマなどにおける「人物相関図」のようなものにも近い。自分が提案したいサービスや企画に関わる人物を把握し、決裁情報や取引実績なども加味しながら「誰にどのような話をするのがお互いにとって最適なのか」を効率的に判断するための材料になる。

営業組織図は営業戦略を策定する上でも重要な役割を果たす。uluでは名刺管理サービス「Sansan」と連携することで組織図の作成を自動化する
営業組織図は営業戦略を策定する上でも重要な役割を果たす。uluでは名刺管理サービス「Sansan」と連携することで組織図の作成を自動化する

「営業がうまくいくかどうかは、意思ある人に出会えるかによって大きく変わってきます。ただそのキーマンとなる人を探すのが大変で、時間がかかる。しかもこのような情報は属人化しやすく、個人の頭の中には入っているものの社内で共有されていないことも多いです」

「自分自身の実体験に加えて、いろいろな人に話を聞いたり、反対に自分が企業から営業を受ける立場を経験したりする中で『どうやら、営業は特殊な才能や能力ではなさそうだ』という考えが強くなっていきました。一方で多くの企業は属人化の課題を解決できず、悩んでいる。テクノロジーの力を用いて日本の営業活動を変えていけないか、そのような思いが企業にもつながりました」(吉木氏)

名刺管理サービス「Sansan」と連携し自動で組織図を作成

具体的な事業アイデアを検証する段階では、合計で100社ほどの営業担当者にヒアリングをした。話を聞いてみてわかったのは、営業成果に関する課題を抱える企業が多いこと。特に現場のネックになっているのが「営業戦略」と「(営業に関連する)社内コミュニケーション」だった。

営業戦略の構築にあたっては予算情報、キーマン情報、ミッションを押さえていることが重要になると吉木氏は話す。営業組織図はこれらの情報を整理するのに有効なツールであり、それを簡単に作れる仕組みがあれば課題解決の糸口にもなる。

吉木氏たちが開発したuluは、この営業組織図を自動で作成できるサービスだ。名刺管理サービスの「Sansan」と連携することで、従来は個人が時間をかけて整理していた組織図の作成時間がほぼゼロになる。