カフェ店舗事業はMBOで新会社に移管

なお、M&A後もカンカクは存続する形で夜パフェやジンのブランドといった各事業を継続していく。同時に、カフェ店舗事業はMBOによって松本氏が代表を務める新会社・biplaneに移管し、店舗運営に取り組むほか、新店舗の出店も計画する。

グッドイートカンパニーは、食にこだわりを持った“Tabebito(タベビト:食べる旅人)”と呼ばれる人たちが紹介する商品を中心に取り扱う食のECサイト「GOOD EAT CLUB(グッドイートクラブ)」を提供する企業。カンカクは2021年1月から、同サービスのプロダクト企画・開発に参画しており、松本氏も同社の取締役CPOを兼任していた。今回のM&Aに関しては、実質的にはグッドイートカンパニーが開発会社を人材ごと買収する、いわゆるアクハイアリング(人材獲得のための買収)だ。

GOOD EAT CLUB公式サイトのスクリーンショット
GOOD EAT CLUB公式サイトのスクリーンショット

GOOD EAT CLUBは2021年7月のグランドオープンから約10カ月で累計アイテム数は1000を突破したほか、会員数は5倍に成長しているという。

なぜ、松本氏はグッドイートカンパニーへのM&Aを決断したのか。その裏にあるカフェ店舗事業の「誤算」と食のECサイトの「勝算」について話を聞いた。

スタートアップの時間軸とは異なった「カフェの立ち上げ」

「会社を立ち上げてから半年でコロナ禍になるとは……。完全に想定外でした」

取材の冒頭、松本氏はこう振り返る。カンカクが手がける完全キャッシュレスカフェは専用のモバイルオーダーアプリを通じてメニューを事前注文できるほか、月額3800円でスペシャルティコーヒー(1杯400円)が毎日楽しめ、ドリンクメニューが割引になる定額プラン「メンバーシップ」を提供している点が大きな特徴となっている。

2019年8月、東京・北参道にオープンしたKITASANDO COFFEEを皮切りに、2021年2月には東京・麻布十番にTAILORED CAFEをオープンするなど、順調に店舗数を拡大させていた。だが、TAILORED CAFEのオープンから間もなくしてコロナ禍になる。

「オフィス街を中心に小規模の店舗をたくさん立ち上げ、月額会員を一気に獲得していく事業モデルを当初は考えていたんです。ただ、そのモデルはアフターコロナの時代を考えても破綻しているな、と。今後オフィスのあり方が変わり、週2〜3回しか出社しないオフィス近辺のカフェの会員になるかと言ったら、絶対にならないと思います。そこで事業モデルを根本から見直していくことにしました」(松本氏)