リサーチ活動は主に平日の夜や土日を活用しながら、「初期リサーチ」「本格リサーチ」「初期市場検証」「最終市場検証」という大きく4つのステップで進めていった。

豊田氏がスマート修繕立ち上げ前に実施したリサーチの内容と流れ
豊田氏がスマート修繕立ち上げ前に実施したリサーチの内容と流れ

まずは調査会社や国交省が発行しているレポートなどウェブ上の情報を中心に収集しながら、並行してスポットコンサルティングサービスの「ビザスク」を通じて業界関係者から生の声を集めた。

次の段階では外部のコンサルタントの力も借りながら、もう一度複数の業界関係者や組合、工事会社など数十名にヒアリングを実施し「初期の仮説がズレていないか」を入念に確かめていく。

「工事範囲を問題にならない範囲で広くしたい管理会社と、必要十分な範囲に留めたい管理組合はどうしても利益相反関係になりやすいです。かといって管理組合が自立するのは難しく、管理会社に頼らざるを得ないことが多い。競争原理を働かせるためにコンサルタントなどに依頼しても、そこで談合や不正行為が行われ、結果的に管理組合側が経済的な損失を被るような問題が発生してしまっています」(豊田氏)

リサーチを続けていく中で豊田氏が感じたのは「初期の仮説が間違っておらず、業界の課題が根深いこと」。そこで市場検証を進めていくために「Wix」や「STUDIO」といったノーコードサービスを用いて自身で簡易的なサイトを作成し、ウェブ広告で集客をしながら運用した。

「特に初期の検証用サイトは本当に簡易的なものではあったのですが、それでも実際に数名から事前登録をいただきました。最終的な検証段階では工事会社を十数社集めた上で運用してみると、20件ほどの見積もり相談が発生し、1件は制約まで至ったんです。(利用者からは)仮説通りの声も聞こえてきて、確実に困っている人がいること、事業機会が存在することを感じました」(豊田氏)

2年間の“週末起業期間”を経て独立、1.5億円を調達し事業拡大へ

一連のプロセスを通じて市場の課題感やスマート修繕のような解決策に対する明確なニーズを検証できたことから、最終的にはデライトベンチャーズより1.5億円の投資を受け、独立したスタートアップとして事業を本格的に展開することが決まった。

プロジェクトスタートから今回のサービスローンチまでに要した時間は約2年間。周囲の協力を得ながらも、基本的には工事会社の開拓からパートナーとの連携、サイトの設計、集客までを豊田氏が手探りで進めていった。「最初は数十社の工事会社にウェブフォームから連絡をしてみたものの、反応がゼロだった」(豊田氏)が、地道に準備を進めサービスのローンチまでこぎつけた。