スマート修繕のサービス構造
スマート修繕のサービス構造

構造自体はとてもシンプルなサービスではあるものの、単なるマッチングサービスではない点が大きな特徴。管理組合やビルオーナーといったユーザーに対して、それぞれ担当のコーディネーターがつき、要望に応じて最大で8社の工事会社に候補を絞り込む。運営側で各社についての実績や経営状況、特徴などをまとめたレポートを作成。数十ページに及ぶ見積もりの内容は比較表を作り、金額差などがすぐに把握できるようにしてユーザーに提供する。

工事会社に対してはあらかじめ契約ガイドラインを用意した上で、実際に提示された内容がそれに準拠しているかを確認し、ユーザーが不利な状況に陥ることを防ぐ。

「シンプルなマッチングサービスだけでは課題は解決されないと思っています。(経験がなければ)工事会社がどこにいるかもわからないし、数十ページの専門用語だらけの見積もりの比べ方もわからない。多くの人は見積もりや契約にたどり着けずに困っているので、一連のプロセスを徹底的にコーディネートする仕組みが必要だと感じていました」(豊田氏

ローンチ時点で数十社が登録済みの工事会社は審査制で、独立系かつ一定の実績がある年商10億円以上の大手企業や中堅企業などに絞って掲載。業界パートナーとして設計コンサルタントやマンション管理士ともタッグを組み、専門的な問い合わせについても丁寧に対応できる体制を整えた。

ユーザー側は完全に無料で利用でき、成約した際に工事会社からマーケティング費用というかたちで収益を得るモデルだ。

DeNA系VCによる「アンケート」が転機に

スマート修繕のプロジェクトは、豊田氏が前職のディー・エヌ・エー(DeNA)在職時に始まった。転機になったのが、社内SNSで流れてきたアンケートに回答したことだ。

このアンケートはDeNA系列のVCであるデライトベンチャーズが「不動産領域の課題」をリストアップするために実施したもの。自身が分譲マンションの理事長の経験から大規模修繕工事における課題を痛感していたこともあり、その内容について記入したところ、新規事業創出の責任者から連絡が届いたという。

「当時は起業には全く興味がなかったのですが、新規事業に挑戦したいという気持ちはありました。(責任者から)この領域の事業機会をリサーチして欲しいという依頼を受けたこともあり、通常業務を100%継続しながら『週末起業』のようなかたちで、デライト・ベンチャーズ内でリサーチ活動を始めたんです」(豊田氏)