たとえば店舗型モビリティはテストマーケティングのような意味合いで「移動しながら勝ちパターンを探る手段」としても使われ始めている。新たなエリアに進出する前にモビリティで販売して感触を確かめ、モビリティで得られた知見を新商品の開発に活かす。そのような用途で大手の事業者がSHOP STOPを活用する例も出てきている。

また店舗の幅に加えて広がってきているのがエリアだ。もともとは都心部のオフィス街が中心だったところから、住宅地や地方のスペースの数も徐々に増えてきた。

人口減少が続くような地域では店舗への来店客も減っていく可能性が高いため、コストを押さえながら商圏も広げられる店舗型モビリティは有力な選択肢になりうる。地方でも市役所や大型のコールセンターなどがある場所は供給が不足しがちなこともあり、実際に「都内に匹敵するほどの売り上げが出ているエリア」も存在するという。

なお地方展開においては現地の事業者とのパートナーシップを強化中だ。秋田ではトヨタカローラ秋田や秋田トヨペットとタッグを組み、現地のスペースや店舗の獲得を進めている。Mellowとしては店舗型モビリティの運営ノウハウや配車管理システムなどの基盤を提供するかたちになるが、この座組みがうまく機能し始めているそうだ。

事業会社などから10億円を調達、社会のインフラとなるサービス目指す

緊急事態宣言下ではオフィス街でのキッチンカーのニーズが大幅に減少し、一時は「売り上げが半減してギリギリの状態」も経験したMellow。そこから住宅街向けのキッチンカープランを始めとした対策を実行し、事業を継続してきた。

現在はオフィス街でのニーズも戻ってきたことに加え、店舗型モビリティの市場自体もさらなる拡大が期待できる状況だ。「以前はニッチトップと言われることも多かった」(森口氏)が、三井不動産グループが提供する「MIKKE!」など、移動販売や店舗型モビリティに着目したサービスも広がってきている。

「コンテンツだけでなく、コンテキストを載せられることがECと比べた場合の店舗型モビリティの最大の特徴です。(接客という)対面のコミュニケーションを通じて、ストーリーを訴求しながらサービスを提供できます。加えて、街そのものに変化を生めることは明確にポジティブな点だと考えています。移動店舗のプラットフォームが広がることによって、毎日街のお店がどんどん変わっていく。街づくりという観点で見たときに、そこに変化と豊かさを加えることができるのが店舗型モビリティならではの魅力です」