そのような理由から現在同社には220人ほどのエージェントが参画している。四半期の取扱高も約90億円規模に成長しており、エージェント数や取扱高は1年で約6倍に拡大した。

今後TERASSでは2000人のエージェントが活躍する日本最大級の不動産仲介組織を目指して事業を広げていく計画。そのための資金としてグロービス・キャピタルパートナーズ、SBIインベストメント、インキュベイトファンド、三菱UFJキャピタル、comboの5社を引受先とした第三者割当増資により総額10億円を調達した。

独自の業務管理ツールでエージェントの多様な働き方をサポート

TERASS代表取締役の江口亮介氏は2012年に新卒でリクルートに入社し、SUUMOの広告企画営業や商品戦略策定などを担当。その後マッキンゼーアンドカンパニーを経て、2019年にTERASSを創業している。

現在の事業を立ち上げる1つのきっかけになったのが優れた不動産エージェントとの出会いだ。自身が不動産の購入やリノベーションを複数回経験する中で、エージェントのコンサルティングが良い結果をもたらした。

不動産の売買においてエージェントの介在価値は大きい──。この体験が「良いエージェント探しから家探しを始める」という考え方にもつながった。

現在TERASSでは中古物件の売買体験の変革に取り組んでいる。不動産研究所や東日本不動産流通機構の調査資料によると、日本でも2016年に首都圏で中古マンションの取引数が新築マンションの取引数を上回り、中古物件の売買が活発になってきている状況だ。

また「建てた会社が売る」新築物件とはビジネスプロセスが異なり、中古物件は個人間の取引を仲介会社やエージェントがサポートしていく。そのため「物件の良し悪しを含めた提案や交渉ができるエージェントが重宝される」(江口氏)という特性もある。

TERASSとしては優れたエージェントの業務を支援することで、エージェントと消費者双方にとって満足できる体験を実現することを目指して事業を展開してきた。

同社のプロダクトは大きく2つ。エージェントの活動を効率的にサポートする業務管理ツールの「Terass Cloud」と、住宅売買を検討する個人とエージェントをマッチングする「Terass Offer(旧 Agently)」だ。

Terassでは所属するエージェント向けに業務管理ツール「Terass Cloud」を提供している
TERASSでは業務管理ツール「Terass Cloud」を用いてエージェントの業務効率化や自動化をサポートしている

Terass Cloudはエージェントの事務作業を巻き取り、効率的に処理するための社内ツールという位置付け。不動産売買に特化するかたちで顧客管理や必要なドキュメントを自動で出力する機能のほか、各種事務業務の申請・管理機能などを備える。