従来の仲介会社では固定給プラスインセンティブ型の報酬体系の場合は売上の30%程度、 完全な成果報酬型の場合でも50〜60%程度が一般的だという。そのためTerassの「75%のコミッション」はエージェントにとっても大きなモチベーションになる。

実際に同社に所属するエージェントの中には、前職の年収を3カ月で上回った人もいる。エージェントの平均年収も約1200万円で、東京都のエージェントの平均年収の約3倍。年収3000〜5000万円を稼ぐ事例が複数出てきており、現時点では1人だけであるものの年収1億円の“スターエージェント”も生まれた。

特に業界で活躍しているエージェントほど、業界全体やエージェントの働き方を変えていきたいという変革意識が高く、Terassの事業に共感を示してくれることも多いそう。結果としてエージェントの20%以上がリファラル(すでに所属している個人からの紹介)で参画しており「優れたエージェントが新たなエージェントを連れてきてくれる構造」ができつつあるという。

2000人のプロフェッショナルが集結する次世代の不動産仲介組織へ

TERASSのボードメンバー
TERASSのボードメンバー

個人の不動産エージェントが活躍する米国では物件情報がオープンになっていることもあり、ポータルサイト上にはエージェントの情報が顔写真付きで並び、「どのエージェントと物件を見にいきたいか」といったかたちでエージェントを軸に家探しを進めていくような土壌が整っている。

Terassが挑戦している新形態の不動産仲介会社のモデルは「クラウドブローカレッジ」と呼ばれ、米国ではeXp Realtyのような先駆者が存在している状況だ。

「(米国に比べると)日本においては個人のエージェントから家を探すという方法はまだまだマイノリティです。ただその一方で『この人にお願いしたい』といったように、エージェントを指定して家探しを進めるような成功事例が少しずつ出てきています」(江口氏)

これまでTerassではエージェントが効率的に働けるように、業務をサポートする基盤づくりに注力してきた。結果としてエージェントの数を増やしても運営できる体制が整ってきた中で、今後は消費者側に付加価値を提供できるような仕組みづくりにも投資をする。

具体的には購入者向けの住宅ローン領域や売却をサポートする機能を強化していく方針。エージェント向けのCRM機能や業務効率化ツールの改良にも引き続き取り組む。

目標の1つとして掲げているのが、2025年3月末までに2000人のエージェントが参画する不動産エージェントファームを作ること。江口氏の話では業界大手の三井のリハウスが約1500人体制であり、Terassとしては日本発のクラウドブローカレッジ型のモデルで日本最大級の不動産仲介組織を目指すという。