また独自開発のインクにより、立体的な3Dプリントにも対応。7月に実施した報道関係向けのデモでは、バスケットボールの表面の凹凸を再現したTシャツをプリント。筆者も触ってみたところ、その肌触りは小学校時代に遊んでいたバスケットボールそのものだった。

バスケットボールの表面の凹凸を再現したTシャツ
バスケットボールの表面の凹凸を再現した立体プリント

サミュエル氏によると、現在、世界で1300社以上が同社のプリンターを導入しているという。その代表例として、同氏はAmazonによるTシャツのオンデマンド生産について説明した。

「AmazonはWarner BrothersやDisneyといった企業とのライセンス契約のもと、プリントTシャツを販売しています。同社は我々のプリンターを世界各国に合計で数百台ほど導入しており、顧客からの注文後、Tシャツをプリントし、届けています」(サミュエル氏)

海外ではAmazonのほか、「Adidas」などのブランドもKornit Digitalのプリンターを導入している。日本ではプラザクリエイト以外にも、複数のアパレル企業が同社の顧客となっている。

日本市場とメタバースに見る商機

Kornit Digitalは8月10日、2022年第2四半期(4〜6月)の決算を発表した。同四半期の売上高は5810万ドル(約78億円)で、アナリスト予想の8850万ドル(約118億円)を大幅に下回った。決して好調な業績とは言い難いが、今後は日本を中心にアジア地域での事業展開にも注力し、売上規模を拡大していく方針だとサミュエル氏は語る。

日本では、2021年6月に東京証券取引所から公表された「コーポレートガバナンス・コード」の改訂版ではサステナビリティに関する取り組みについての内容が追加される​​など、ESG情報の開示が求められるようになっている。

そのためサミュエル氏は今後、日本のアパレル業界で、同社製品へのニーズが高まっていくのではないかと語る。またサミュエル氏は3次元の仮想空間「メタバース」での商機を見出そうとしている。

金融関連事業を展開する米Citygroupは3月、メタバースの世界市場は2030年までに8〜13兆ドル(約944兆円〜約1530兆円。当時のおおよその為替レート、1ドル=118円で換算)規模にまで成長するとのレポートを発表。メタバースの普及は、アパレル業界における新たなニーズも創出するのではないかとサミュエル氏は見ている。

「どうすればバーチャルな世界と現実世界をつなげるのか。そんな事を日々、考えています。なぜなら、私の子供を含む若者たちは、1日の90%をバーチャルな世界で過ごしているからです。彼ら彼女らは、『Facebook』は使わないかもしれませんが(笑)、『TikTok』や『WhatsApp』、『Zoom』、そしてオンラインゲームなどの世界で、多くの時間を過ごしています。メタバースにおいて、自分のアバターを着せ替えすることも一般的になってきました」