企業買収後のサーチャーがおよそ5年から7年の間、企業価値の向上に努めた後は、新たな買収先を探すか、上場を目指すなどしてイグジットし、キャピタルゲインを投資家と分け合うこととなる。場合によってはマネジメントバイアウト(MBO)によってサーチャーが経営権を買い取るケースもある。

スタンフォードやハーバードのMBAホルダーの間で広がる

サーチファンドの起源は、1984年のこと。現・スタンフォード大学経営大学院教授のH.アービング・グルースベック氏が、当時客員講師を務めていたハーバードビジネススクールで発案したものとされる。

その後、スタンフォード大学を中心に研究が進められ、起業家としてゼロイチで事業を興す以外の選択肢として、経営学修士(MBA)を取得したビジネススクールの卒業生が注目。「資金を調達して既存の企業や事業を買収し、価値を高めてイグジットする」という新しい手段は、スタンフォード以外にもハーバードビジネススクールをはじめとする米国の主要なビジネススクールへ広がり、多くのサーチャーが誕生した。また、サーチャーのためのコミュニティとして、「Searchfunder」のようなプラットフォームも活況を呈している。

現在は米国のみならず、ヨーロッパやシンガポールをはじめとする東南アジアでも、サーチファンドが活動している。後継者不足で中小企業の事業承継が課題となっている日本でも、2000年代に入り、サーチファンドが注目されるようになった。

後継者難に悩む日本の中小企業の救世主となるか

サーチャーのサーチ活動やデューデリジェンス、資金調達などの手続きを支援する組織をサーチファンドアクセラレーターと呼ぶ。2018年5月には日本でもJapan Search Fund Accelerator(JaSFA)がサーチファンドアクセラレーターとしての活動を開始した。

2019年2月にはJaSFAと山口フィナンシャルグループが、日本初のファンド・オブ・サーチファンド(サーチファンドのためのファンド)としてYMFG Searchファンドを設立。地域企業の事業承継を支援する。2020年2月には、このファンドから第1号案件としてサーチャーによる株式取得が実現している。

また、2020年10月設立のサーチファンド・ジャパンは、日本のサーチャーの先駆けとして活動していた伊藤公健氏が日本M&Aセンター、日本政策投資銀行、キャリアインキュベーションとの合弁で立ち上げたサーチファンド投資会社だ。2020年11月にファンド・オブ・サーチファンドとして1号ファンドを組成し、サーチャーを募集。現在は200名近い応募者の中から選ばれた、約10名のサーチャーへの支援を行っている。