「『教室』を用意しても、誰でも同じものを提供できるわけではありません。いわゆるアクセラレータープログラムは外部のメンターから指導を受けて、3カ月程度でデモデイでの発表を目指すというものです。ですがDCM Atlasは基本的には『投資』です」(原氏)

AtlasはこれまでDCMで実施してきた投資先への支援を、プログラムというかたちにまとめたものだという。そのためデモデイのような「お披露目の場」は設定しない。またプログラムに関わる指導・支援はすべてDCMメンバーおよび、DCMの投資先起業家に限定しているという。米国の有力アクセラレーター(アクセラレータープログラムに特化したVC)として名をはせるY Combinatorも、プログラムにおける指導者には投資先起業家を採用しているが、それと同様にカルチャーや哲学をもとに一貫した支援を行うのが狙いだという。なお4000万円の資金提供は受け入れ必須で、形式はJ-KISS(J-KISS型新株予約権。バリュエーションキャップを5億円(ポストバリュエーション)で設定し、20%のディスカウント)の一律となる。

米国でも老舗VCのセコイアキャピタルが「Arc」と呼ぶシード期のスタートアップを対象にした出資プログラムを2022年6月から開始している。原氏はAtlasがこれと同様のプログラムだと説明する。

スタートアップの成功は、創立1年で決まる

DCMは1996年に米国でスタートしたVCだ。早くから米国に加えて日本や中国でもスタートアップ投資を行ってきた。日本の投資先としては、古くはアドウェイズやオールアバウトから、Sansan、freee、ビザスクなどの上場イグジット実績を持つほか、10Xやキャディ、atama+など成長中のスタートアップも少なくない。だがその実績に対して、投資件数は決して多いとは言えない。原氏は「現状1年で2、3社程度」と説明する。

日本を担当するキャピタリストの人数が限られていることもその理由の1つかも知れないが(コーポレートサイト上では日本担当は共同創業者でゼネラルパートナーのDAVID CHAO氏、本多氏、原氏を含め4人となっているが、CHAO氏や本多氏は海外スタートアップもカバーしている)、投資までに長い時間をかけて起業家と「バリュープロポジション(顧客に提供する価値)」をどう作るかを議論することを重要視しているため、結果として極めて限定した投資を実行しているという。