だからこそMagic Moment Playbookのコンセプトがフィットせず「機能が足りない」「(複雑な設定なども含めて自由にカスタマイズできないことが)気持ち悪い」などと率直なフィードバックをもらうこともあったという。

一方で、初期から使ってくれていたエンタープライズ企業においては定量的な成果につながるケースも複数出ていた。同社の営業メンバーが顧客企業に常駐し、プロダクトを活用しながら営業変革を推進する「カスタマーサクセスBPO」に関しても評判が良かったという。

「今の段階で自分たちが本当にインパクトを出せる領域や対象ユーザーを全くわかっていなかったのだと気づいたんです。それを教えてくれたのは既存の顧客でした。たとえば3人の営業組織と100人の営業組織に導入される場合では、自分たちにとってのビジネスインパクトだけでなく、先方においてのインパクトも違います。実際に『もともと8人くらい採用しないといけないと思っていたけど2人で(想定していた業務に)対応できた』といった事例も生まれてきて。方向性が見えたので、昨年の10月にドラスティックに戦略を変えたんです」(村尾氏)

エンプラに振り切り飛躍、自動化機能を軸にプロダクトを強化

まずは自分たちのプロダクトの価値をより感じてもらえる可能性の高い、エンタープライズに注力する。

方針を固めてからは事業が急ピッチで成長し、現在は数十社へサービスを提供。2022年6月時点の年間収益額は2021年6月と比べて3.3倍に拡大した。三井物産や凸版印刷を始め伝統的な大企業でも導入が進み始め、顧客の層も広がってきた。

プロダクトの機能面についても、従来のコンセプトは残しつつも自動化(シーケンス)に関する機能などを拡充。たとえば「会議後にその日説明に使った資料を自動で共有する」「リマインドメールを自動で送る」といったように、シナリオを組みながら定常的に発生するコミュニケーションを自動で実行できる仕組みを作っている。

 

この機能によって営業担当者はタスクの抜け漏れをなくしながら、架電やメール、資料送付などの活動量を増やせる。実際にMagic Moment Playbookをアクティブに活用している企業では、活動量が平均で約1.8倍に増えた。

また同サービスでは確度の高い案件から順にレコメンドされるため“営業の無駄打ち”が減り、商談数や受注率などに関しても改善が見込めるという。

今後Magic Momentでは自然言語解析や機械学習領域への投資にも力を入れていく方針で、音声による自動入力機能の開発などを検討する。さらなる事業拡大に向けてDNX Ventures、DCMベンチャーズ、三井物産を引受先とした第三者割当増資も実施した。