「リモートワーク環境において“ハンコを押すためだけに出社すること”が話題になりましたが、実は契約書の原本が会社にファイリングされているために“過去の契約を見返すために出社する”というケースもかなりあるんです。今はそういった需要にも応えられるようになり、そこに魅力を感じてクラウドサインを使ってくださる企業もいます」(橘氏)
次の1年はここからさらに一歩踏み込み、クラウドサインAIを使ってデータ化した情報を使って「法務担当者がデータドリブンで意思決定をしていく」ためのアナリティクス基盤を整える計画だ。
「契約書をデータ化することで『来月契約期間が切れる契約書が30件あって、それぞれの契約内容がどうなっているのか』といった細かい情報が全て可視化されるんです。この定量的な情報を基に、法務担当者が事業部門に手数料率を交渉するようにアドバイスをしたり、目標を設定したりするための仕組みを整えていきます。実は現場でも過去の契約書の見直しが十分にできているところは少なく、中には10年前の力関係のまま契約を更新し続けているような場合もある。過去の契約をクラウド化することで、契約業務においてもっとデータを有効活用できるようになります」(橘氏)
この機能はすでに10万社に導入されていて、日本で最も多くの契約書の流通量があるクラウドサインだからこそ付加価値を提供できるというのが橘氏の考え。弁護士ドットコムでは業界を問わないHorizontal SaaSとしてクラウドサインを改良しつつも、クラウドサインAIや「クラウドサインNOW」のように特定の領域の悩みを解決する派生プロダクトも充実させることで、クラウドサインならではの体験を拡張していきたいという。
「最近自分の中では『次の100年、契約の新しい形』ということを考えているんです。明治に印鑑登録制度ができてから147年間、契約のスタンダードは紙とハンコでした。基本的に過去の契約を遡ることはできず、契約プロセスも重厚で法体系もそれに合わせる内容になっています。それが今、テクノロジーの進化によってクラウド契約や契約書のクラウド化ができるようになり、新しい契約の形が生まれ始めている。ここから先の契約はこれまでの人類が体験したことがないものであり、クラウドサインを通じて次の100年のスタンダードになるような、新しい契約のスタイルを作っていきたいと考えています」(橘氏)