直近半年ほどで電子契約の法的な位置付けも大きく変わってきた
直近半年ほどで電子契約の法的な位置付けも大きく変わってきた

5月29日に法務省が会社法施行規則の解釈として、クラウドサインによる電子署名が取締役会議事録に用いるものとして適法であることを認定。翌月には商業登記のオンライン申請においてクラウドサインで締結された書類を受け付けることが発表された。

合わせて直近では行政がQ&Aを通じて電子契約に関連するスタンスを明確にする事例が続いている。6月には内閣府・法務省・経済産業省が「押印についてのQ&A」の中で押印の効果が絶対神話的なものではなく、電子契約にも効力がありその利用を促進することを提示。7月には総務省・法務省・経産省が曖昧だった電子署名法の解釈を見直し、クラウドサインを含む事業者署名型電子契約サービスによる電子署名が電子署名法第2条の要件を満たす基準を示した。

特にこのQ&Aを通じて、クラウドサインが電子署名法第2条に準拠していることが公式に表明されたことが大きいと橘氏は話す。

もともと民法では契約方式を定めた条文はなく、どの方式を選ぶのかは当事者の自由によると考えられている。そこに20年ほど前に電子署名法という法律ができ、この規格に準拠すれば裁判上『その人が本当にこの文章を作成したこと』を推定してくれる仕組みが作られた。

ただ、電子署名法では厳格な手段に限定されていたため「(全ての契約において)準拠しようと思うと一般的には使いづらい面がある」(橘氏)のが難点。クラウドサインでは本人確認手段として2段階認証を入れるなどセキュリティ面に配慮して開発はしていたものの、電子署名法上の扱いにおいては曖昧な状態だったという。

「この5年間でさまざまな企業の法務担当者と話をする中で、(電子署名法は)絶対の法律ではなく、民法に照らし合わせればクラウドサインの方式でも問題がないことを伝えても、『民法や御社の考えは分かったけど、結局電子署名法に準拠しているんですか?』と言われることが何百回、何千回とありました。これは法務部としては当然生じる疑問です。だからこそ今回3つの省庁が正式に電子署名法の解釈について表明いただけたことのインパクトは大きく、自分たちとしては『クラウドサインを使っても問題ない』とお墨付きを得られたようなものだと捉えています」(橘氏)

今までも電子署名法上の位置付けが1つのネックとなり、導入に至らなかったり、部分的な利用に留まることもあったそう。すでに法整備の影響は感じていると言うが、今回のアップデートは今後のクラウドサインにとって追い風となりそうだ。