私たちは、この廃棄される運命にある蔵の酒粕を用いてベーススピリッツをつくり、そこからジンを製造する。そしてそのジンの売上で新米を購入し、これを酒粕提供蔵に送る。それでまた日本酒蔵は日本酒を製造し、搾った後の酒粕を私たちに送る。このような循環経済型のジンを新たに販売していく。

 

東京発、世界をリードする最先端の蒸溜所

「エシカル」と「食」というキーワードを聞いて、何を思い浮かべるだろうか。環境に配慮したヴィーガン、その実践としての大豆を用いた植物由来のものをベースにした代替肉、あるいは卵の代替としてのアクアファバなどを思い浮かべる人がいるかもしれない。

このようなエシカルな食文化は、個々の消費行動により未来を変えていく意思を感じるし、間違いなく素晴らしいことなのだが、人によっては味を二の次にした思想先行と想像するかもしれない。

そこで、味について語ろう。実は未活用の酒粕からベーススピリッツをつくると、一般的な原料用アルコール(ベーススピリッツ)と比較して元の酒の持つ芳醇さ、特に香りの豊かさが段違いとなる。真っ白なキャンバスというよりは、そのもの自体が個性を持つ立体的なものにボタニカルによるフレーバーを加えることで、三次元の彫刻のような次元の違う表現が味や風味の点で可能になるのだ。

 

エシカルな作り方をすることで、通常の作り方よりも美味しさが追求できる。まさに「エシカルだから、もっと美味しい」のである。

私たちの作るジンは、実際に飲んだ人から「飲む香水」のようだと言われる。それだけ香り高いのだ。私たちは今年の2月に活動を開始したばかりのスタートアップだが、すでに食べログの東京フレンチランキングで1位を獲得した「レフェルヴェソンス」のメニューに採用されるなど、プロ中のプロにも味の面で高い評価をいただいている。

 

現在は私たちがレシピを開発し、蒸留免許を持っている酒造会社の設備を使って製造を行っているが、在庫薄の状態が続いている。また、どうしてもパートナー会社設備だと当該設備のオフシーズンを中心に製造することになるため、製造回数が限られ、ロットの調整も難しいため小ロットでの臨機応変なモノづくりができない。私たちは現在の製造方法に限界を感じ始めていた。

そのような背景の中、私たちは大きな決断をした。それがジンの一大消費地である東京・蔵前に、エシカルな蒸溜所をつくるということだ。原料は、酒粕を含む「廃棄される可能性のあるもの」のみを使用し、一般的には自社で賄われることが少なく輸入物が多くを占めるボタニカル原料についても、一部を蒸溜所の屋上やバルコニーで育てた国産のハーブなどを生摘みで使用。