山崎 2倍、3倍伸ばすという目線は、絶対にぶらしたらいけないということです。西口さんは、常に視座が高いんです。僕はユーザーにとって、どんな価値があるかといったことを説明しがちだったのですが、西口さんは絶対に誰が見ても明白にすごいと分かる結果を出し続けました。
それで、サービスが大きくなれば、ユーザーが増えるし、会社として雇用も増やせるので、西口さんのしていることは正しいと思いましたね。
徳力 データの分析ばかりしていると、少し改善していればいいと思えてしまうのですが、先に大きな目標があると、違った見方ができるということですね。
山崎 そうですね。小さな改善も大事ですが、ブランド全体で見ると、効果が限定的でブレイクスルーではないですから。
「“顧客起点”は、サムの影響だよ」
徳力 山崎さんは当時、どのようにチームに貢献しようとされたのですか。
山崎 正しい戦略にはメッセージがあると思います。例えば、西口さんから乃木坂46のブログやニュースが読める乃木坂46チャンネルの構想を聞いた瞬間に「確かにまとまっている場所がない」「今までと違うユーザー層が反応しそう」など、様々な利用シーンが想像できました。
私がすぐできることは、乃木坂46のミュージックビデオや出演している番組を全部見て、メンバーを覚えることです。どんな記事が読まれるか、他に何があったら嬉しいかなど。ファンの言葉で理想像を語れるようにしました。
こういったプロモーションは、ファンにどう思われるかがカギです。ファンから「白石さんが、なんでこんなセリフを言っているの」と思われたら元も子もありません。それよりも、スマニューがメンバーを「こんなにかわいく撮ってくれた」と、ファンの味方だと思ってもらえれば、ブランドへの信頼度が全く変わってきますから。
徳力 じゃあ、テレビCMに芸人の千鳥を起用したときも。
山崎 はい。ネタを全部見たと思います。
徳力 最終的には、西口さんからも信頼されていましたよね。評価されたと感じた瞬間は、ありましたか。
山崎 はい。僕は数字にコミットするので、それこそ広告を流した番組は全部見ますし、なぜ伸びたのかを自分で考えて伝えました。そうした姿勢は評価してくれていたと思います。
あとは、西口さんから、ご著書の『顧客起点マーケティング』のタイトルの“顧客起点”は、サム(山崎さんの愛称)の影響だよ、と言われました。
徳力 それは、すごいですね。西口さんの「山崎さんがすぐに辞めちゃう」という認識は、完全に間違っていましたね(笑)。
山崎 はい(笑)。キャラクターの軽さから、当初は数字へのコミット力に疑問を感じられたのかもしれません。