コロナ禍のチュニジアで発案した“空間を再現する”音声チャット

サービスを提供するoVice代表取締役社長で、シリアルアントレプレナーのジョン・セーヒョン氏は2020年2月、出張で訪れたチュニジアから出国できなくなっていた。新型コロナウイルスの急激な感染拡大により、予期せぬロックダウンに見舞われたのだ。

帰国のめどが立たない中、外出も禁止となり、完全にリモートで仕事を進めなければならなくなったジョン氏。Zoomなどのツールも試したが、仲間と簡単に会話するにはあまり適していないと感じた。ジョン氏はその理由を「距離や空間の概念がないからではないか」と考え、早速、空間の概念を取り入れたチャットツールの開発に着手した。

「空間の概念を取り入れる」というと、VR/AR技術を応用したものが思い浮かぶところだが、情報量の多さ、処理の重さを考えると、チュニジアのインターネット通信環境では安定的な利用は見込めない。VRヘッドセットを常に使うとなると、ますます現実的ではなくなる。

そこでジョン氏はVRやARではなく、平面のレイアウト上にオフィス空間を再現し、その中でアイコン状のアバターを動かすことで、声を中心にコミュニケーションするツールを作ることにした。

6月に帰国したジョン氏はツールを広く公開すべく、チームとともに開発をさらに進め、8月にはブラウザ上にバーチャルオフィスを再現するoViceをリリースした。

oViceはブラウザで指定のURLにアクセスするだけで利用できる。専用アプリのダウンロードは不要。スペースにアクセスすると、すでにアクセスしているメンバーとともに自分のアバターとなるアイコンが表示される。メンバーにアイコンを近づけると会話の音声が大きくなり、遠ざけると小さくなる。距離だけでなく、アバターの方向も指定でき、前にいるアバターからの声は大きく、背を向けているアバターからの声は小さく聞こえる。

オープンスペースでは、自分以外のメンバー同士が会話しているところにアバターを近づけると、話が聞こえるようになり、会話に参加することもできる。ミーティングルームでは外部の音は聞こえず、中の会話も外に漏れないので、リアル空間の会議室のように利用することができる。

Zoomのようにカメラをオンにして、ビデオ通話状態にすることも可能。画面共有も行える。空間レイアウトはカスタマイズが可能で、オフィスの形態や働き方に合わせた設定に変えられる。

oVice紹介動画

ジョン氏への取材もoViceを使って行ったが、ZoomやTeamsと比べると会話のかぶりが少なく、話しやすい印象だ。通信環境は「推奨が3Mbps以上」(ジョン氏)とのことで、3G回線でもスムーズに会話ができるそうだ。遅延が少ないのは「音声データに何も処理をせず、P2P通信を利用しているから」(ジョン氏)とのこと。同じ場所から複数ユーザーが接続するとハウリングしやすいのが難点とジョン氏はいうが、別々の場から利用する分にはむしろ快適に使えそうだった。