葛藤の中、空を離れるメンバーもいた。組織の規模も一時は縮小することになり、昨年末ごろ最大で30名いたメンバーは現在、新たに加わったメンバーも含めて22名となっている。

リモートで失われた熱量を取り戻すため新しい雇用区分を設定

コロナ禍により痛みを経験した空。新規事業への道筋が見え、再び組織拡大に取り組むことになったが、今度は以前とは違うアプローチでの組織づくりを試みるべく、新しい人事制度を取り入れることにした。

「WIDE」と名付けられた新人事制度は、10月1日からスタートした。WIDEには2つの大きな特徴がある。1つ目は、正社員か否かではない、3つの雇用区分をつくったことだ。

「もともと、空は『Happy Growth』というビジョンを掲げています。ビジネスの内容だけでなく、組織や働き方や生き方についても、新しいものを世の中に提案して確立し、僕たちがいいと信じる働き方、生き方を目指してきました。だから人事制度も創業時からゼロベースで考えてつくってきた経緯があります」(松村氏)

その上で、コロナ禍での働き方については空でも自問自答があった。そして改めてワークスタイルやライフスタイルについて考え、迷った結果の解として、WIDEの3つの雇用区分が生まれたのだという。

感染拡大でフルリモートになり、5月にはオフィスも解約した空。「(フルリモートになることで)失われた熱量や、集まっていたからこそのスピード感も痛感した」と松村氏は語る。その熱量を取り戻し、新しい組織をつくっていきたい思いもあった。

「これから空を、メンバーが集まって働く会社にするのか、ずっとフルリモートに切り替えるのか。感染症や世の中の状況を眺めていても、テレワーク推奨とはいえ規制があるわけではありません。これは自分たちで決めるしかないと考えました」(松村氏)

区分は無期契約社員の「ドライバー」、有期契約社員の「コラボレーター」、業務委託契約などの「ランサー」の3つに分かれる。ドライバーは組織のコアとして戦略やカルチャーを築く役割、コラボレーターは自由を確保しつつ、スキルで事業に貢献する存在で、ランサーは独立したプロとして仕事を担う役目を持つ。

空の3つの雇用区分
空の3つの雇用区分 画像提供:空

枠組みを決めるにあたって大切にしたのは「人によってリスク感覚は違う、ということです」と松村氏は語る。

「コロナ感染に気を付けながらも積極的に人と会おうという人もいれば、できるだけ接触は避けたいし電車にも乗りたくないという人もいる。全員に『集まれ』とか『集まるな』と乱暴には決められません。個々の方針により働き方を自己選択でき、かつ『誰がどの働き方を選んだかが、互いに見えるように』と枠組みをつくりました。3つでなく、百者百通りでもよかったんですが、それだと効率が悪くなりますし、お互いに『あの人はこうじゃないかな』などと想像や忖度で動けなくなるのはもったいない。枠組みがあることで、お互いの働き方の尊重にもなると思いました」(松村氏)