「大逆転人生ゲーム」
人生ゲームは時代背景を反映。「大逆転人生ゲーム」はコロナ禍を踏まえて製作されている

「今年は周期通りなら辛口シリーズの発売年だったのですが、昨今の空気を踏まえるとただの辛口はふさわしくない。もともと辛口シリーズには、『世知辛い状況をゲームで笑い飛ばす』というコンセプトがありますが、今回は逆境からの返り咲きというモチーフを前面に押し出した『大逆転』を採用しました」(池澤氏)

池澤氏は明言こそしなかったが、大逆転人生ゲームは少なからずコロナ禍を踏まえて製作されている。マス目のテキスト内容を楽しむのも人生ゲームの大きな醍醐味だが、今作でもそれは健在。「リモート会議で下だけパジャマなのがバレた。$8,000はらう」、「今日は巣ごもり お宝カード(編集部注:プレイヤーの財産となるアイテム)『人生を楽しむボードゲーム』か『話題の映画ソフト』を取る」といったマスからも、新しい生活様式とそれにまつわるストレスをゲームで笑い飛ばそうとする姿勢が感じられる。

大事なのはゲームの結果より、過程で生まれるコミュニケーション

最近の巣ごもり需要の影響も相まって、日本のボードゲーム市場は着実に成長している。日本人クリエイターによるボードゲームも増えており、ヨドバシカメラや東急ハンズ、ドン・キホーテなど、以前に比べて購入場所も多くなった。

こうした影響は人生ゲームにも及んでおり、2020年度年末年始の売上は前年同月比170%を記録したという。とはいえ、こうしたボードゲームを取り巻く環境については、「特にそれを受けて何かを変えるつもりはありません」と池澤氏。

「近年のボードゲームには戦略性が高く、大人でも楽しめるものが多いですが、人生ゲームが大切にしているのは、子供からお年寄りまで幅広く遊べること。ブラックな風刺を取り入れた一部のテーマ版には、対象年齢が高めのものもありますが、この軸を変えるつもりはありません」(池澤氏)

幅広い年齢層に受け入れられるために特に大切にしているのは、やはり子どもだ。大逆転人生ゲームでは従来の「就職」に加えて「副業」が追加されたが、その内容も「フードデリバリー」「動画クリエイター」など時代性を意識したものになっている。こうしたチョイスもその時々に子どもが憧れるものを反映している。

「ゲームにおける戦略要素をあまり高くせず、運次第で勝てる設計にしているのも、幅広い年齢層に楽しんでいただくためです。人生ゲームにおいて大事なのは、あくまで結果より過程。ゲームを通じて交わされるコミュニケーションこそが楽しさの基盤だというのは、初代から変わっていません」(池澤氏)