LUUPユーザーが起こしている違反行為は、歩道走行や駐車違反、逆走、信号無視など。ひき逃げのような悪質な違反は報告されていないが、放っておけば事故に発展しかねない。現に5月には、電動キックボードで歩道を走行中のLUUPユーザーが歩行者に接触することがあったと岡井氏は説明する。幸い歩行者に怪我や被害はなく、事故には発展しなかったという。

違反走行は同業者が展開するサービスでも確認されている。例えば、福岡県・福岡市を中心に電動キックボードシェアサービスを展開する「mobby」では7月、ユーザーが機体を第三者へと貸し渡し、その第三者が無免許・酒気帯び運転で逮捕される事態が発生した。

「実証実験」のため事業者が取れる対策は限定的

LUUPを利用するには、免許証をアプリに登録し、警察庁や国土交通省といった関係省庁が作成したアプリ内のテストに全問正解しなければならない。アプリでは利用ごとに毎回、「歩道走行や逆走は違反である」こともユーザーに伝えているほか、違反ユーザーのアカウントを永久凍結するといった対応を取っている。また、交通ルールの周知を目的に試乗会なども開催している。

だが、事業者としてできる対策には、現時点では限度がある。もちろん、事業者もアプリや機体のアップデートにより安全性を高める工夫が必要だ。ただ、ユーザーがより安全に電動キックボードのシェアサービスを利用するためには、まだまだユーザーの“自覚”に頼る部分が大きい。また、法整備や道路のほかの利用者への周知も待たれるところだ。

例えばLUUPユーザー向けのテストの作成は関係省庁が担当しており、その内容は基礎的な交通ルールに限定されている。普通免許取得者であれば簡単に解けてしまう。加えて、Luupは警察のように直接違反ユーザーを取り締まることはできない。

また、LUUPユーザーが従わなければならない交通ルールは、実証実験の途中で変更することはできない。その理由は、現在展開中のシェアサービスは、あくまで「政府主導の実証実験」という立て付けだからだ。

この実証実験では、機体を原付ではなく、小型特殊自動車として扱う。そのため、最高時速は15キロメートル、二段階右折は禁止、ヘルメットの着用は任意となるほか、普通自転車専用通行帯に加えて自転車道、そして一方通行だが自転車は走行可とされている車道も走行可能となる。

この特例措置があることで、個人が所有する(原付扱いの)電動キックボードについても「ヘルメットは任意だ」と誤解をするケースが結果として増えているようだ。また、時速15キロメートルという低速で自動車と同じ小回り右折をすること自体が危険だという批判もある。Luupでは実証実験で得られたデータをもとに、関係省庁に最高速度や二段階右折などに関する見直しを提言していくという。