日本でもESG観点での注目が集まる

電動キックボードシェアはもともと、交通渋滞を緩和しCO2排出量を削減する、環境に優しいモビリティという売り文句で注目を集めた。米大手の「BIRD」や「Lime」は交通渋滞が社会問題化している米・サンフランシスコ近郊で立ち上がったサービスだ。

今回、Luupの資金調達にはESG(環境・社会・ガバナンス)分野への投資に特化したEarthshotファンドが参加している。岡井氏は「海外では長らく『CO2排出量の削減』という観点で電動キックボードが評価されてきました。その流れがようやく日本にも訪れたようです」と話す。

「人1人を運ぶ時に自動車よりも電動キックボードの方が20分の1から40分の1ほどCO2の排出量が減ります。1人で短距離を自動車で移動をするというのは、将来的には『(ESG観点で)恥ずかしい行為』となっている可能性はあります。EV(電気自動車)も製造過程を含めると、普通の自動車と同じくらいのCO2を排出してしまうのではないかと議論されています」

「一方、電動キックボードは10キログラムの鉄の塊。約1トンの自動車と比較すると、CO2排出量への影響ははるかに小さいのです。Luupとしても、CO2削減を推進していく存在にならなければならないのだと改めて実感しました」(岡井氏)

利用拡大とともに目立ちはじめた違反行為

便利で気軽、かつ3密を避けられる移動手段として注目を集める電動キックボードだが、安全面には懸念が残る。5月には大阪でひき逃げ事故が発生し、被害者は重傷を負った。 

一般的な電動キックボードは現行法上、「原動機付自転車(原付)」として扱われる。ただし、LUUPなど一部のシェアサービスなどは政府との実証実験というかたちで提供されており、機体は特例措置として「小型特殊自動車」扱いとなる。

原付扱いの機体が公道走行するにはウィンカーなど国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動機付自転車登録をし、免許証を携帯する必要がある。だが、大阪で事故を起こした容疑者の機体にはウィンカーやナンバープレートは装着されていなかった。加えて、2人乗り状態で歩道を走行していたこと、ぶつかって転倒させたにもかかわらず、そのまま立ち去ったことから、この事故は極めて悪質なものと判断され、容疑者の逮捕に至った。 

大阪の事故は個人所有の電動キックボードで起きたものだった。一方、シェアサービスでも、事故こそ起こっていないが交通ルール違反は発生している。