“造語“のサービスが招いた、事業成長をくじく権利闘争

そこで知財の重要性が痛いほど理解できる実例を、いくつか紹介したい。まずは、現在も係争中の「Re就活」vs.「リシュ活」訴訟だ。

第二新卒向け転職サービスの「Re就活」(リシューカツ)を運営する学情が、大学生が履修履歴を登録することでオファーが届く逆求人アプリ「リシュ活」(リシュカツ)を運営する履修履歴活用コンソーシアムを商標権侵害で訴え、2018年に始まったこの訴訟は、もう3年ほど係争が続いている。

Re就活の公式サイトのスクリーンショット
Re就活の公式サイトのスクリーンショット

学情はドメインの使用差し止めと1億円の損害賠償請求を訴え、2021年1月には大阪地裁で一審判決が出て商標権の侵害が認定。使用差止と44万円の支払いを命じられた。履修履歴活用コンソーシアム側はこれを不服として控訴している。

一定の時期に、似たような造語のプロダクトが立て続けに出てくると、その流行の中で衝突することがよくある。「Re就活」vs.「リシュ活」訴訟は、その典型例だ。

学情は「リシュ活」が2005年に商標登録したRe就活に名称が似ているとして商標の変更を要求していた。履修履歴活用コンソーシアムは「特許庁の判断を仰ぐ」として同月、リシュ活について特許庁に商標登録を出願し、2019年9月に登録された。

リシュ活の公式サイトのスクリーンショット
リシュ活の公式サイトのスクリーンショット

商標登録のトラブルは、土地の区画のトラブルに似ている。事前に区画整理がされ、かつ登記ができていれば、こうしたトラブルは起きないはずだった。

まさに、“法の不知”が招いたトラブルである。

権利の「明らかなフリーライド」を疑う商標登録も

また、悪意のあるパクリ(盗作)によって、事業成長にストップがかけられてしまうことも少なくない。実際に私が担当したクライアントで、高輪ゲートウェイ駅にある無人コンビニなどを運営するTOUCH TO GOが、「明らかなるフリーライド」と思われても仕方がない仕打ちを受けたことがあった。

法人の設立に合わせて商標権を取ろうとしたところ、なんと2週間くらいの差で、誰かが「TOUCH TO GO」で商標登録を出願していたのである。法人設立前にメディアで大きく取り上げられたことがきっかけだった。苦労した末に先願を拒絶へと導いたものの、これだけ素早く商標登録に動いたとしても、トラブルが発生するケースは往々にしてあり得る。

本件では何とか難を逃れたものの、非常に例外的なケースである。通常は資本力がある大手の日用品メーカーなどがすでに全国で販売し、かつ大々的に広告宣伝しているようなものの商標でなければ、先願を退けることは難しい。