ウェブサービスの場合はSEO(検索エンジンでいかに上位表示されるか)がカギを握り、それには掲載している物件の数も重要になるため、物件数を減らすインセンティブが働きづらいからだ。

カナリーに搭載されている機能に関しても決して特殊なものはないが、アプリに最適化することによって利便性を高められていると佐々木氏は話す。

物件の検索や閲覧はもちろん、内見予約までアプリでスムーズに完結。物件によっては360度パノラマの機能を使って室内の様子を詳しく見ることも可能だ。希望条件に合った仲介会社とカナリー上でマッチングされ、そのまま効率良く部屋探しを進められる。

もちろん既存の事業者にはウェブ版とは別にアプリを提供しているところもあるが、ウェブの需要も大きいからこそ、アプリだけに振り切ったUI/UXを開発するのは簡単ではない。

数百社が導入、ウリはアプリで顧客接点を作れること

仲介会社向けの管理画面のイメージ
仲介会社向けの管理画面のイメージ

一方の不動産仲介会社側はカナリーをどのように捉えているのか。そもそも仲介会社は基本的に複数のサービスを並行して利用するかたちになるので、カナリーはそのうちの1つという位置付けになる。

その上で佐々木氏いわく、明確に刺さっているのが「アプリで部屋探しをしているユーザーと接点を作れること」だ。仲介会社としては、特に若い世代にこれからリーチしていくためにはアプリのチャネルを持っておく利点は大きい。

中には「ウェブはSUUMOやHOME'S、アプリはカナリー」といったようにチャネルに応じて使い分けている仲介会社も存在するという。

上述したとおりカナリーはユーザーと仲介会社が1対1でマッチングする仕様のため、顧客の取り合いのために担当者が疲弊することもない。また360度パノラマビューや内見予約などの機能を用いて、無駄を減らしつつユーザーに最適なサポートを提供できる基盤もある。

こうした特徴から、今では数百社の仲介会社がカナリーを活用している。2020年7月にシリーズAラウンドで3億円の調達を発表した際には首都圏エリアに絞って提供していたが、プロダクトの成長を踏まえて年末に全国展開をスタート。現在は仲介会社とのネットワークの拡充に力を入れているところだ。

もちろん細かい機能設計なども含め、実際にやりながら見えてきたことを軸にその都度軌道修正を加えてきた。当初カナリーは不動産賃貸における「ギグワークの活用」のような文脈で、個人のエージェントに焦点を当てようとしていた。

ただ実際に2年強にわたってサービスを展開してわかったのは、一定の専門性が必要になることに加え、売買と比べても単価の低い賃貸でこのモデルを広げていくのは難易度が高いということ。そこからは研修制度なども整った仲介会社と連携を強化する方向へとシフトしながら成長してきた。