特に後者については「セールスアンドリースバック」というモデルを応用しており、これが一般的な質屋ビジネスとの違いであると同時に、数年ほど前「CASH」を皮切りに広がった“即時買取”型のサービスとの違いでもある。

いわゆる即時買取のサービスでは、アプリで査定したアイテムを実際に買い取って保管し、セカンドマーケット向けに販売するなどしていた。

これに対してセールスアンドリースバックは「Aさんが持っているモノを買い取り、それを再びAさんに貸し出す手法」だとイメージすればわかりやすい。CASHARiに当てはめると現金化したアイテムの所有権は運営側に移転するものの、ユーザーは3カ月にわたって利用料(リース料)を支払い続けることでアイテムを手元に置きながら使うことができる。

利用期間終了後には残存価格を支払ってアイテムを買い戻せるほか、再契約を行い利用期間を延長することも可能。もしくはアイテムをカシャリに送って手放してしまってもいい。

従来セールスアンドリースバックは不動産や自動車などを対象に使われていたスキームだが、それを個人の少額動産向けにアレンジしたのがCASHARiの発想だ。

2020年11月のオープンベータ版ローンチから徐々にユーザー数を増やし、現在は1.1万人を超える。40〜50代が6割以上を占めるとも言われる既存の質屋とは異なり、ユーザー層の8割近くが20〜30代の若い世代だ。

査定されたアイテムはスマホを中心としたデジタルガジェットが圧倒的に多く、全体の8割ほど。累計の査定件数も約9000件まで広がった。

たとえば現金が必要なものの「借金には抵抗がある」という理由や、「(思い入れがあるため)アイテムを手放さずに現金を手に入れたい」という理由などからCASHARiが使われているそう。同じユーザーが、同じアイテムで再度リースバックをすることもあるという。

カギは独自の画像査定技術と不正利用対策

事業のキモになるのが「独自の画像査定技術」と「不正利用対策」だ。通常の質屋であれば実物を確認しながら査定できるが、CASHARiの場合は撮影された写真を頼りにオンライン上で査定を進める必要がある。

査定に関しては、これまでそのほとんどを手動で行ってきた。磯田氏の質屋の現場経験とノウハウをフル活用しながら“3枚の画像”を基に真贋鑑定ができる体制を整備。並行して、機械学習技術を活用した自動化を見据えながら着々とデータを蓄積してきた。

質屋ビジネスや査定の知見がある磯田氏を中心に画像のみで状態を判定する仕組みを構築している
質屋ビジネスや査定の知見がある磯田氏を中心に画像のみで状態を判定する仕組みを構築している

山本氏によるとiPhoneについては自動査定の目処も立ち始めている段階で、今後完全な自動化を目指していく方針。PCやブランド品などのアイテムにおいても同様の取り組みを進めていく計画だ。