ゲーム業界が高い成長率を維持している理由について、垣屋氏は「デバイスの変化への対応」を挙げる。

「1980年代のゲームセンターなどを中心とした専用筐体(きょうたい)のアーケードゲームから始まって、90年代には家庭用ゲーム機、2000年代にはPC、10年代にはモバイルへと、デバイスの進化とともに新しいゲームが作られ、きちんと対応してきていることが理由として挙げられます。これにより、ゲームをプレーする人口も着実に増え続けています」(垣屋氏)

ゲーム業界の規模に関するどの調査でも、世界のゲーマー人口は現在20億人を超えると推定している。そのゲーマーたちが、デバイスの変化により、近い将来にはゲームの処理をゲーム機やモバイルでなく、クラウド上で行う「クラウド型」のゲームを求めるようになるだろうというのが、垣屋氏の見立てだ。クラウド型では、どのデバイスでも同じゲームをプレーでき、しかもセーブデータなどのプレー実績をオンライン経由で共有して、続きを別のデバイスでも遊べるようになる。

こうしたデバイスの進化に伴うゲーム業界の変化により、日本のゲーム関連産業の立ち位置は相対的に弱くなっていると垣屋氏は指摘する。かつては世界に冠たるゲーム立国だった日本に今、いったい何が起こっているのか。垣屋氏に解説してもらった。

MSやTencentを筆頭にプラットフォーム戦略を進める海外ゲーム大手

日本のゲーム産業が置かれた状況について、垣屋氏は以下のとおり説明する。

ゲーム業界マップ
ゲーム業界マップ 垣屋氏の資料を元に編集部で作成

ゲーム業界はテクノロジーの進化が早く、派生領域も多岐にわたる。そこで広義のゲーム業界の中に、サブセグメント、サブセクターとして細かいジャンルの事業が数多く成立している。たとえばゲーム開発にしても、ゲーム専用機(コンソール)向け、PC向け、スマートフォン向けのそれぞれが1つのジャンルを確立し、それぞれに多くの企業やブランドが属する。

また、ゲーム開発で使う共通した処理を提供する開発環境「Unity(ユニティ)」や「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」のようなゲームエンジン、VR/ARなどのxR技術、ゲーム配信のためのストリーミング技術などを提供する事業者、eスポーツ大会のブランドやチームなども、このサブセグメントの一角を構成する。

日本のゲーム関連企業は従来、それぞれ特定のサブセグメントにプレーヤーが存在し、各分野の専業で事業を展開してきた。だが、デバイスが進化し、クラウド化、マルチプラットフォーム化への圧力が高まる中、ゲーム企業としてグローバルで生き残るためには、「プラットフォーム」を目指さなければならないと垣屋氏は説く。