「エンターテインメント市場の中でもゲームの役割は、どんどん大きくなっています。(今後)ゲームがSNSとしての役割を果たすようになることも考えると、ゲームを(事業のスコープから)外せばITでも負けてしまう。そうした状況が起こり得るのではないかとMicrosoftの動きを見ていると感じます」(垣屋氏)

また、スウェーデンを拠点とするデジタルエンターテインメント企業・Modern Times Group(MTG)はもともとテレビの放送局として創業したメディア企業だが、やはりM&Aを通じてゲーム、eスポーツ事業を構築・拡大している。

MTGは、2015年には「Electronic Sports League(ESL)」などのブランドを持つeスポーツ企業・Turtle Entertainmentと、eスポーツ大会主催のDreamHackを傘下に入れた。また、ドイツの大手ゲーム開発企業・InnoGamesにも投資を行っている。さらに複数のVCファンドに出資し、買収先の開拓も怠っていない。

「今、世界的に勢力を拡大しているゲーム企業は、専業やゼロイチでゲーム事業を立ち上げるのではなく、すでにイチになったゲーム会社を自分たちのチームに取り入れて、プラットフォームとして大きくなっているというのが現状です」(垣屋氏)

EnFi代表取締役・Founding Partner 垣屋美智子氏
EnFi代表取締役・Founding Partner 垣屋美智子氏 写真提供:EnFi

力のあるゲーム会社を見いだすゲーム特化型VCの存在感

こうしてゲーム会社への投資が盛んに行われているということは、力のあるゲーム会社を見いだす役割も必要になる。欧米ではこの5年ほど、その役割をドイツのVC・Bitkraft Venturesや、EnFiグローバルイノベーティブテクノロジーファンドも出資するSisu Game Venturesといったゲーム特化型のベンチャーキャピタルが担う動きが出ていると垣屋氏はいう。

「日本ではまだ見られない動きですが、これらVCに見いだされたゲームスタートアップは大手ゲーム会社が買収や追加出資を行う確率が高くなります。また、私のような投資家から見れば、イグジット先が存在しているこれらゲーム特化型ファンドは確度が高い投資先と言えます」(垣屋氏)

もうひとつ、こうしたVCの特徴として垣屋氏は「ゲーム事業で成功した人たちによる投資であるため、クオリティの高いゲームが生まれやすい」という点を挙げている。

「単に『ゲーム会社に投資をしたら当たった』というわけではなく、業界経験のある人が本当にクオリティの高い会社を見つけて、それをどうゼロからイチにするか、やり方をインキュベーションするため、成功しやすい。ゲームで成した財産をゲームに再投資するというお金の使い方によって、ゲーム業界の開発側が活性化しているというのが、今の北米やヨーロッパで起きている状況です」(垣屋氏)