日中両国の経済力や軍事力は、それほど差がついているのです。しかし、予算をGDP比2%にして、5兆円を5年間にわたり特定の兵器の開発だけにかけるという選択肢は、ないものでしょうか。25兆円を投じて、米国の支援も受けられれば、開発速度は一気に上がります。現状、専門家たちは冒頭に挙げた3種類のレーザー兵器の開発に10年はかかると予言しています。しかし、それも開発費次第なのです。

 ゲームチャェンジャーになる兵器の開発こそ、日本の安全を飛躍的に向上することになるのではないでしょうか。

 米国は核爆弾を製造するのに20億ドルをかけました。実はこれ、米国が先の大戦で使用した弾薬製造の費用と同等です。ゲームチェンジャーを創り出すには、それほどの予算が必要なのです。

日本が中止した原爆開発を米国は完遂
問われる「核廃絶」への本気度

 たとえば、かつて日本にも原子爆弾の製造計画がありました。論理としては間違っていませんでしたが、ウラン濃縮の手段と能力からして、大戦に間に合わないと判断し、開発を止めたという経緯があります。しかし米国は、同じ手法で100倍の資金を投じ、ウラン濃縮器から原子爆弾を創り出す道を選びました。それだけの覚悟を要するのが、新兵器開発なのです。

 しかも、原爆をその数年後にソ連が開発したように、すぐに他国に追いつかれることもわかっています。優位性はわずか数年しかありません。アメリカがその優位性を活かして、まったく機能しない国連の組織改革を進め、「常任理事国であっても自国に関する決定への拒否権行使はできない」といったルール作りをしていれば、今日におけるロシアのウクライナでの無謀に対して、国連軍を結成することができたでしょう。核兵器を持つ大国が他国を侵略するリスクが明確になった以上、こうした改革は必須です。

 そして、レーザー兵器の威力を背景に、日本が常任理事国入りを果たすことも可能です。このようなステップを踏んでいかないと、岸田総理の悲願である核廃絶などできるわけはないのです。

 総理の任期など、どんなに頑張っても4~5年です。自身の政治的悲願のために大きな賭けに出る総理こそ、国民が信頼する総理ではないでしょうか。口だけで男女平等や新しい資本主義を唱えても、「ケントウシ」岸田氏の言葉は国民にほとんど信用されず、現に支持率は下がり続けています。その間にも台湾有事や円高・物価高も進行します。国民の信頼を取り戻すためには、発想の飛躍的転換と覚悟が必要です。

 もちろん、皮肉な話ですが、もしレーザー兵器が実現すれば、核抑止が効かなくなり、局地戦争がもっと増えるのではないかという見方もあります。これも、多分正しい予想です。しかし、G7議長として「悲願」と言い切った以上、岸田総理には本当に核廃絶の実現のための政策を、国民に向けて掲げてほしいものです。

(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)

【訂正】
・記事初出時より以下の通り訂正します。
1P目 3段落目:「2023年2月、ウクライナのクリミア奪還がほぼ確実となった時点で、国連緊急総会が招集されました。G7議長国のトップであった岸田文雄総理は、そこで緊急発言の許可を得て登壇しました。異例の登壇です。」→「ウクライナのクリミア奪還がほぼ確実となった時点で、国連緊急総会が招集され、そこでG7議長国のトップを務めた岸田文雄総理が、緊急発言の許可を得て異例の登壇をするとしましょう。以下は架空のエピソードです。」
・2P目の中見出しの下に、以下を加えます。
「さて、実際にこのような演説が行われるとしたら、どんな反応が起きるでしょうか。」
(2023年12月10日17:25 ダイヤモンド・ライフ編集部)​