2022年、世界人口は80億人を突破したと国連が発表しました。70億人からわずか11年、このまま人間が増えると、環境問題、食料問題をはじめ「地球は大丈夫なのか?」と懸念する声にあふれています。しかし、一様に増加しているわけではありません。日本を筆頭とする人口が急速に減少している国々と、あまりにも急激に人口が増大する国々との間の格差が存在します。この人口トレンドのアンバランスをどう考えればいいのでしょうか? イーロン・マスクの発言どおり、日本は消滅してしまうのでしょうか?『米国防総省・人口統計コンサルタントの 人類超長期予測』(ジェニファー・D・シュバ著、ダイヤモンド社刊)を刊行したばかりの、世界の人口統計学の権威の見方を紹介します。(訳:栗木さつき 初出:2022年12月26日)
白髪の国・日本と、子どもの国・ナイジェリアの違い
出生率と死亡率は、国によってどれほどの差があるのだろう?
世界の後発開発途上国では1分間に平均約240人の新生児が生まれているが、先進国ではわずか25人だ。
ためしに日本の地方都市に行けば、白髪の人をたくさん見かけるだろう―日本の人口の50%は48歳を超えていて、世界一の高齢だ。日本はあまりにも急速に高齢化しているので、このまま高齢化が進めば、やがては国が完全に消滅するかもしれない。
日本政府は、2010年の1億2800万人から2060年には8700万人に人口が縮小すると見込んでいる。その頃には、日本人のなんと40%が65歳以上になっているだろう。これは人類史上、前例のないことだ。
一方、ナイジェリアの大都市ラゴスに向かえば、そこは人であふれかえっていて、遊びまわる子どもたちの声が響き渡っているだろう。中位数年齢〔全人口を年齢順に並べたとき、中央で人口を2等分する境界点にある年齢〕が18歳のナイジェリアは、日本とは対極的な状態にある。ナイジェリアの人口の半数以上が子どもや10代の若者なのだ。
この巨大なコーホート〔ある特定期間に出生した集団〕は、ほどなく母親や父親になるだろう(いちばん年長の人たちはすでに親になっている)。
アフリカの経済成長のエンジンであると同時に、スンニ派過激組織ボコ・ハラムの活動拠点でもあるナイジェリアは、世界でもっとも乳児死亡率が高い国の一つではあるものの、人口が若く、出生率も高いため、2050年には人口がアメリカを上回り、現在の2倍の4億人を超えると見込まれている。
世界人口は21世紀も増え続けるだろうが、驚くべきことに、その増加の98%はナイジェリアのような途上国で起こる。図表1は2000年と2020年に人口が多かった国、そして2050年には人口が多くなることが予測される上位10ヵ国を示している。
この50年間における明確な変化の一つは、先進諸国がトップテンから外れることだ。アメリカは例外で、最近までは出生率が人口置換水準〔人口が長期的に増えも減りもせずに一定となる出生の水準〕に近く、移民の受け入れも積極的に行っていた。
2020年の時点で日本はすでに11位に転落しているし、2050年にはコンゴ民主共和国とエチオピアがロシアとメキシコの代わりにトップテン入りすることになり、世界人口の中心は地理的に明らかに変化するだろう。
この半世紀のあいだに、途上国で飛躍的な人口増加が起こることも明白だ。現在から2050年のあいだに、インドでは出生率が低下しているにもかかわらず、アメリカの人口にほぼ相当する人口が加わるだろう。