絶望の高校時代
必死で勉強し、大学へ進学

 高戸さんが中学生になると、両親は自分たちの学歴コンプレックスから膨大な量の勉強を強要。高戸さんは、異常な家庭から逃れたい一心で勉強に没頭し、無事志望高校に合格することができた。

 ところが、入学した高校はハイレベルかつ膨大な学習量で有名な進学校。高戸さんは必死で授業についていこうとするが、高校受験ですべての力を使い果たした、いわゆる“燃え尽き症候群”の状態に陥っていたため、だんだん登校することがつらくなり、ついに不登校になってしまう。

 当然父親は「甘えるな! ふざけるな! 学校へ行け!」と怒鳴り散らし、母親は泣きわめく。

「両親は、いつもは私のことを粗末に扱うくせに、進学校に合格したときだけ自慢の道具として全力で利用しました。“難関校に合格した自慢の種”が、不登校などという恥ずべき烙印を押されることは、彼らには決して許されないことでした」

 朝から怒鳴り散らす父親、泣き叫ぶ母親に取り囲まれながら、高戸さんは布団にくるまって耳を塞いでいた。

 しかし、両親が高戸さんを構ったのは3〜4日間だけ。その後はまるでいないもののように高戸さんを無視し、何事もなかったかのようにもとの生活に戻っていった。

 高戸さんは一人絶望し、それでもぼんやりと、「このままでは自分の人生はより困難なものになる」ということは分かっていたため、「この苦しみから逃れるヒントはないか」と書店をさまよった。

 すると、「もう二度と人間に生まれなくても済むよう、魂の学びを進めなければならない」という、俗に言う“スピリチュアル本”に出会う。

「私は一筋の希望の光を見た思いがして、『魂の学びと来世以降の積み上げのために、今世は歯を食いしばって生きなければならない』と決意しました。高校生の私は人生の危機を、スピリチュアルに縋ってなんとか乗り越えたんです……。ちょっと引きますよね? しかし当時の私には、自分を支えてくれる何かが必要でした」

 大学進学を決意した高戸さんは、追試や補講を必死で受けて無事高校を卒業。両親に頼み込んで一浪を許してもらい、地元の国公立大に合格。

 強い学歴コンプレックスを持つ両親は、大学進学には反対しなかったが、「近所の安い大学しか許さない」と言った。高戸さんは薬学部に進学したかったが、「学費が高いからダメだ!」と却下された。

「薬剤師になれば、恐らく学費なんて就職後数年でペイできたと思われます。しかし、残念ながら両親の頭にはその計算式がなかったようです。彼らに養われていた私は、従わざるを得ませんでした」