どんなに休息しても疲労感が取れず、常に異常な不安や苦しみが襲うようになった。特に夜は心配事で頭がいっぱいになり、一晩中ネット検索をしてしまう。

 それでもひと月に一度は実家に帰省し、親の要求に応えながら、夫との生活や仕事をこなすという生活が続いた。

うつ病をきっかけに決心した
「親の言いなり人生」との決別

 高戸さんは内科にかかったが、どこにも異常はない。ならばと高戸さんは、生まれて初めて心療内科を受診した。

 成育歴や現在の状況を詳しく話すと医師は、重度のうつ病と診断し、「今すぐに入院が必要です」と言った。

 高戸さんは、「まさか自分がうつ病? しかも入院が必要なくらいの重度?」と驚き、これまで親孝行だと信じて必死で頑張ってきた“親の言いなりになること”が、実は自分の心身をむしばんでいた原因の一つだと指摘され、衝撃を受けた。

 病院から帰ると高戸さんは、よせばいいのに両親にすべてを話した。

 すると父親は、「精神科なんて行くな!あんなところ、薬をたくさん飲まされておかしい人間にさせるひどい場所だ!」、母親は、「即刻行くのをやめなさい。私が乗り込んで医者を叱ってやる! 早く病院名を言いなさい!」と、狂ったように騒ぎ始め、母親は遠路はるばる高戸さんの新居に突撃し、怒りや不安をぶちまけた。

 そんな両親を目の当たりにし、高戸さんは次第に、「私の両親はこんな人間だったんだ。両親のせいで私はこんな状況に置かれていたんだ」という気付きが芽生えてきた。

「私は親孝行と称した『親の言いなりの人生』をやめて、新たな生き方の模索を始めました。そのためには嫌でも過去を振り返らなければなりません。頭がどうにかなってしまうんじゃないかというくらいに苦しい苦しい振り返りでした」

 高戸さんは両親との接触を控え、今まで無視し続けていた「自分の感情」に耳を傾け、自分を大切にする生き方を一から探り、実践していく学びを始めた。