アパグループ会長の元谷外志雄アパグループ会長の元谷外志雄 Photo:SANKEI

世界で初めて人工雪を作った
物理学者の中谷宇吉郎

 日本海に接し、石川県南部に位置する小松市。小松製作所や、歌舞伎の勧進帳の舞台となった安宅の関が知られている。小松高校は、1899年開校の県第四中学校をルーツとする伝統校だ。

 四中は1907年に小松中に改称されたが、旧制小松中・新制小松高校を代表する科学者といえば、物理学者の中谷(なかや)宇吉郎だろう。雪の結晶の研究で知られ、人工雪の結晶の造成に世界で初めて成功した。

 小松中―旧制四高(金沢)―東京帝大理学部物理学科を経て、北海道大教授を務めた。理学博士号を京都帝大で受けた。人工雪の研究を基に北大に低温科学研究所が設立され、その主任研究員になった。41年には帝国学士院賞を受賞した。

 科学を一般の人にも分かりやすく伝えることに努め、多くの随筆も著した。

『冬の華』『立春の卵』などが代表作だ。『雪の結晶は、天から送られた手紙である』といった名フレーズを残した(94年刊、岩波文庫『雪』162ページから引用)。

 実弟で考古学者の中谷治宇二郎も小松中出身。東大やパリで研究生活を送ったが、34歳で早逝した。

 宇吉郎の次女の中谷芙二子(日本女子大学附属高校卒)は、「霧の芸術家」という親譲りの別名を持つ。

 小松中出身者の間で、中谷人脈が育った。関戸弥太郎は中谷を慕って北大に入学し、独創的な宇宙線望遠鏡を発明した。名古屋大教授を長く務めた。

 孫野長治は中谷の直弟子になり、雲物理学を専門とし人工雪の実験などに没頭した。北海道大教授だった。

 関戸より16期後輩の亀淵迪は、関戸を慕って名古屋大理学部に入学、ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎(京都府立一中・現洛北高校卒)の後継者の一人となった。筑波大教授を務め、素粒子メダル賞を受賞した。