俺はびっくりした。フリーのディレクターは番組にとっての助っ人外国人的存在であり、手柄を増やすことが次の仕事につながる。ADの手柄にしたってなんの得もない。

 それなのにムネさんは、「こいつまだ20代ですよ。天才かもしれません」「ロケもできるし、編集もできるし。若いのにがんばっていますよ」などとプロデューサーの前で俺のことを褒めた。

非エリートの勝負学非エリートの勝負学』(サンクチュアリ出版) マッコイ斉藤 著

 それも一回だけじゃない、何度も俺のことを話してくれた。

 おかげでAD歴4年、わずか25歳にして、俺は『天才・たけしの元気が出るテレビ!! 』のディレクターになることができた。

 異例の抜擢だった。

 ムネさんには本当に感謝しかない。

 人生の転換期には、大恩人が現れるという。俺の人生もまさにそんなことのくり返しで、誰かが必ず要所で俺のことを変えてくれた。

 俺はただまっすぐに生きているだけ。でも誰かがそんな愚直な俺を見て、呆れて、ひとつ上の世界に引き上げてくれるらしい。