石川 まずは新しいことをやる前に成果を出す必要が出てきたので、EC本部という組織を新設して部長職を兼務しました。もともとはファッション事業部、家具事業部などの各事業部にそれぞれWeb担当者が在籍していたのですが、その人たちを一カ所にまとめたんです。
そしてECサイトの運用方法を確立し、私が先ほどからあまり価値がないと言っているものを取り入れ始めるわけです。
徳力 まずはECを基礎からやり直すと。
石川 そうです。例えば、メルマガを各部署でバラバラに打っていたのをひとつに束ねました。社内からは、めちゃくちゃ反対されましたけどね。他にも、ドメインパワーを生かすためにSEO用のストックコンテンツを大量生成できるスキームを準備しました。
徳力 でも、石川さんからすれば、成果は絶対に出るだろうと思っていた。
石川 はい、実際に成果が出ましたね。当時のディノス・セシール は、紙の方法をそのままECサイトに持ってきていたので、たとえば100万通送れるメルマガを究極的には1000通にまで絞ってターゲティングして送っていました。それらをまとめて見直して、数字で検証していきました。SEOに関しても、毎日相当の自然検索トラフィックを稼いでくれるページができあがっています。
最新のデジタルテクノロジーとDMを連携
徳力 昨年、行われた第33回全日本DM大賞では、石川さんが手掛けたディノス・セシールでのデジタルテクノロジーとDMを連携させた施策が評価されて、グランプリを受賞しました。
これはECの基礎の見直しで社内の信頼関係を築き、デジタル側に予算を取ってもらえるようにしたうえで、取り組まれたことだったのですね。
石川 そうです。ECの事業部は私がいなくても回るように組織ができあがったので、私はより未来への投資的な案件に着手できるような立場にしてもらってから、ようやく実験がスタートできました。
あの施策は、カタログのいいところだけを残して、ダメなところをデジタルテクノロジーで潰していくという発想なんです。いいところは、クリエイティブをきちんとつくり込むことや、リーチ確率が圧倒的であること、レスポンスがとにかく高いことなどです。
徳力 グランプリは「カート落ちDM」と「小冊子DM」の2作品で受賞していますが、どっちがメインだったんですか。
石川 カート落ちDMは、技術的なスキームの検証という位置付けです。カート落ちしたところに通常であればメールを送るところを、代わりにハガキを送るという施策。ハガキにカート落ちした商品を印刷して24時間以内に送るので、ECの中でトリガー発生から顧客に接触するまでのリードタイムが最も短いシナリオなんですよ。