「正直なところ、その頃は事業的には常に苦しい状況でした。レビューサイトやコンサル事業、他社サイトの集客支援などをやりながら、それをコールセンター業務につぎ込んでいる状況。ですが、レビューして、比較するだけではダメだったんだと思っています。コールセンターまで作ったことが、サイトの価値につながりました」(芦沢氏)

「価格が明瞭な葬儀サービスが必要」

 レビューサイトは事業として育ちつつあったという当時のよりそう。葬儀に関する相談を受ける中で、現状の葬儀ビジネスにまだまだ不明瞭な点があるということだと気付いた芦沢氏。2013年には明瞭な価格体系を打ち出した葬儀サービスの「よりそうのお葬式(開始当初の名称は「シンプルなお葬式」)」や、法事や法要に定額のお布施で僧侶を手配する「お坊さん便」といった葬儀関連サービスを自ら展開するに至った。

芦沢雅治氏芦沢雅治氏 Photo by Yuhei Iwamoto

「たとえばお布施の金額を相談されても、これまでだと『お気持ちです』としか言えませんでした。それを定額化して示したことの反応がよかったんです。葬儀の業界を研究してきましたが、すればするほど、『分かりづらい』と感じました。たとえ複数社を並べて比較検討したところで、何が違うのかが見えにくい。お客さまのニーズ考えると、価格が明瞭で、パッケージとしてしっかりした葬儀が必要だと考えました」

「老後は怖い。それはみんな怖いじゃないですか。年金をはじめとしたお金、親や自分自身の介護だってそうです。もちろん終活もそうです。だからまず、ここからやっていこうと決めました。最初の頃には『インターネットで葬儀社は探さない』とも言われました。今までは家族や知り合い経由、もしくは病院の提携先などのつながり、もしくは電話帳で探していた領域。それをパソコンやスマホで検索しないわけはないと思っていました」(芦沢氏)

 2009年にはユニクエストの「小さなお葬式」、イオン子会社であるイオンライフの「イオンのお葬式」といった明瞭な価格設定をうたう葬儀サービスがスタート。業界団体との摩擦もあったが、その認知を広げつつあった。また、病院提携の葬儀社に葬儀を依頼する割合も減ってきている(芦沢氏によると現在では10%にも満たない状況だという)。さらに、都市圏を中心に核家族化が進んで葬儀自体の規模も小さくなってきた。こういった状況も葬儀サービスのニーズに拍車をかけた。

問い合わせは4年で8倍以上に

 同社の売上高は非開示だが、葬儀サービスを軸に、数十億円規模に成長しているという。また、葬儀サービスへの累積問い合わせ件数は2014年度末から2018年度末で比較して約8倍、お坊さん便では約13倍になった。また、2018年3月には社名変更に加えて、墓地、法事、相続といった葬儀周辺領域のサービスをワンストップで提供するブランドとして「よりそう」を打ち出している。よりそうでは生前に加入することで、葬儀や供養の特典が受けられる「よりそうメンバー制度」を展開しているが、その会員は数万人になっているという。