テック産業と不透明な資金の関係性は、今回だけの問題ではない。

 サウジアラビアのジャーナリストが暗殺された事件にムハンマド・ビン・サルマン皇太子が関与していた可能性を受けて、サウジアラビア政府から出資を受けているソフトバンクにも批判が集まっている。完全に透明性を持った資金を探してくることは容易ではないが、MITやソフトバンクのような業界のリーダーたちが不透明な資金を受け入れていたことは、産業全体への不信感に繋がっていくことだろう。

 テック産業がアメリカ西海岸のユートピアを体現するカウンターカルチャーであった時代はすでに終焉した。いまやそれは、プライバシーや倫理的観点から強い疑義を向けられる巨大産業であり、その資金源に注目が集まるのは至極当然のことである。産業で最もよく知られた研究機関の1つが直面したスキャンダルは、当初の印象よりも広い範囲に影響を及ぼすかもしれない。

(マイナースタジオ代表取締役CEO 石田 健)