二度目の起業もECでした。そもそも私がやっていたコンサルという仕事は「外部アドバイザー」。自ら事業をつくってお金をもうけた経験がありませんでした。だったら自分の事業でマネタイズをしてみよう、と考えたんです。ですが事業がうまく回らず、半年で800万円くらいの借金を抱えることになってしまいました。

 あらゆるECの本を読んだんですが、トップページでの直帰率が90パーセント以上で、誰も商品を買ってくれない。そんな時、旅行時代にイギリスで出会った友人が、たまたまFacebookに「もしかして友人かも」と表示されたんです。話してみると、彼は業界では名前の知られたグロースハッカーになっていたんです。それで、彼に自分のサイトのことを相談しました。

 そこで教えてもらったのが、スウェーデンの企業が開発した「GhostRec」というツールでした。ユーザーのサイト上での行動を分析できるツールなのですが、これを使うことで大きな気付きがあったんです。毎日コツコツとサイトを改善していったのですが、最終的にはコンバージョンが以前と比較して500%も上がって、黒字化しました。そこから数ヵ月で、個人の負債もゼロになりました。ですが、「このまま事業を伸ばすのか」と考えたときに、ずっとやりたい事業でもないと気付きました。また、いったんは当初の「自分の事業でマネタイズする」という目的を達成したこともあり、精算しようと決めました。

カネではなく、人のためになるサービスを

“起業家”という生き方は、私自身の志をも成長させてくれているものです。だから、ECの会社を閉じて、次に何をやるかと考えた時に、本当に人のためになるサービスをつくろうと決めました。私が助けられたGhostRecは、ウェブの分析しかできないツールです。だったらその「アプリ版」を作ろうときめたのがRepro創業のきっかけです。今は志も製品も、成長を続けています。社員は現在200人まで拡大しました。売上高も順調に推移しています。

 今考えれば、これまで2回の起業は、高校2年で決めた気持ちが動機になったものでした。サイトをつくって、5億円で売って、好きに旅をする人生を過ごす――結局そういう考えでは、自分のお金のために起業している状況だったので、うまくいかなかったんだろうなと思います。近江商人の教えとして「商売は世の為、人の為」というのがありますが、まさにその通りなんです。自分が起業して、世に貢献するということを考えられていませんでした。コンサル時代の先輩にも、そういって怒られたことがあります。