いまだに引きずる、“復活後”のダメージ

 財務面での復活は比較的早かったんです。ですが、会社のマインドの復活に関してはかなり長い時間がかかりました。今でもまだ引きずってるところもあります。

 当然ですが、会社って傾くと財布の紐を締め始めるんです。基本的に利益を出す方法は売り上げを上げるかコストを削るかのどちらかですが、当時はコストを削るという選択をしていました。不採算事業を売却して、可能な限り外注に切り替えるというような手段を使います。そうなると、今度はどんどん働きにくくなって、社員が実際に辞めていきます。一時期は約2割の社員が辞めてしまいました。

 そうなると人件費がどんどん下がるんで、結果として会社の利益は増えるんですよ。当時、私の一番の関心は「いかに利益を復活させていくか」ということ。社員が会社に不満を持っても利益は増えるので、経営者としては目標は達成されている——そんないびつな構造での復活を遂げていきました。

 ですが当然、売り上げを増やして利益を増やしたわけではないので、結果として売り上げが増えなくなっていくわけです。四半期ベースで見れば、前の四半期を割り込むことになった。社員が減り、社員の満足度も減り、売り上げの成長率も鈍化する。債務超過よりも、そのあとのダメージが大きかったんです。

 2009年から2010年をそんなふうに過ごしたのですが、これではいけないということで一念発起して立ち上げたプロジェクトが「石狩データセンター」の立ち上げでした。そして2014年頃からは社内への手当ても始めました。まず、働きやすい環境、働きがいのある環境を作ることに関心を向けるようにしました。加えて、2016年と2017年には大幅にエンジニアも増員。結果として売り上げの伸び率は非常に良くなりました。

 今では平均の残業時間も5時間程度、有休の取得も8割以上となりました。あとは働きがいをいかに高めていってチーム力を高めていくか。これができた時にようやく債務超過からの卒業になるんじゃないかなと思っています。

すべてにおいて重要なのは「伝える」こと

 最近だとスタートアップの起業家のメンターをすることが非常に増えてきました。みんないろんな課題を抱えているんですけども、一言で言うとほとんどは「話していないから起こること」なんです。

 世の中の不満の8割ほどは、「合意のない期待」。つまり、お互いが合意をしているわけではないけれども、勝手に期待をして、それが達成されないと腹を立てるということなんです。最近は「空気を読む」という言葉が多用されていますが、人によって考え方も持ってる情報も全然違うので、他の人の気持ちだとか考えていることってほとんど分からないんですね。