上場して、売り上げが目的化してしまった

 そんなことを言っていたのですが、いざ上場したら上場したで、シンプルに心地よくなってしまいました。当時はまだ、ライブドアショックの前でしたから株価もよかった。一夜にして億万長者になるわけで、それ自体は夢のある話です。上場が1つの目標であったのは間違いないので、それが達成されたということですごく喜んでいたのを記憶しています。勢い余ってその当時いろいろ遊びまわったりすることもありました。個人のことで言えば、大阪なら北新地、東京だったら六本木あたりにも遊びに行きました。

 あと、会社のことで言うと、買収案件が来るんですよね。そうなるとどんどん買収するわけなんですよ。ステータスのためということもあったのかもしれませんが、結局は「売り上げのためだ」と言って買収することが増えてしまいました。買収先とうまく付き合うことができるスキルもないのに、どんどんグループが広がっていってしまう。オンラインゲームも、海外事業も、ソフトハウスの買収も。動画配信も始めることになりました。

 この会社は、もともとサーバサービスが好きで、そしてインターネットが好きで創業した会社なわけです。けれども、上場して、売上が目的化してしまった。とにかく売上を上げなければならない、と。

 上場すると、経営者には大きなプレッシャーがかかります。そのプレッシャーには、大きく2つの種類があります。1つは、今よりも高い目標を掲げなければならないということ。そしてもう1つは、その高い目標を達成しないといけないということ。それらは会社を作った時には全くないものなんですが、上場すれば当然たくさんの株主からフィードバックをいただくことになります。そのプレッシャーに打ち勝つために、売り上げを上げることを目的化してしまいがちなのです。本来は自分たちのビジネス、そしてそのお客様の満足の結果としての売り上げなはずなのに。

本業と「ちょっと違う」事業で債務超過に

 当時を振り返れば、「データセンターやサーバだけをやっていては、上位のコンテンツレイヤーに行けない。そういった上位レイヤーのお客様が自分でデータセンター作り始めると、我々の商売が行き詰まってしまうのではないか」という焦りもありました。

 それが結果的に、債務超過に陥るまでになってしまいました。その引き金になったのがオンラインゲーム事業だと言われるのですが、実際のところ問題になったのは、たくさん買収した子会社たちだったんですね。それらの会社が相次いで赤字になって減損になって、オンラインゲームも減損になっていきました。