赤穂浪士が仕えた殿様は“女好きの暴君”だった!?「忠臣蔵」がテレビから消えた残念な理由3代歌川豊国(1786-1864年)が描いた『忠雄義臣録 第三』。浅野内匠頭が吉良上野介に斬りかかる「殿中でござる」の名場面 東京都立中央図書館特別文庫室所蔵

「忠臣蔵」はかつて、時代劇の定番としてお茶の間に親しまれていた。赤穂藩主だった浅野内匠頭の敵(かたき)を取るべく、47人の赤穂浪士が集結。因縁の吉良邸に攻め入るという筋書きである。しかし実は、忠臣蔵の“悲劇の主人公”である内匠頭の評判は芳しくなかった。「昼夜、奥に入って美女と戯(たわむ)れ…」と残念な記録も残っている。そのせいか、同作品はテレビから消えつつある。実際は問題児だった内匠頭の“バカ殿”ぶりに迫る。(歴史ライター・編集プロダクション「ディラナダチ」代表 小林 明)

時代劇の定番「忠臣蔵」が
テレビから消えた!?

 昭和の時代劇を代表した『忠臣蔵』が、テレビから消えつつある。NHK大河ドラマでは平成11(1999)年の『元禄繚乱』が最後だ。もはや討ち入りを美談と捉えるのは時代錯誤であり、命を賭して主君の仇(あだ)を討つなど、今の世の中になじまないからだろう。

 大河以外のNHK時代劇では平成28(2016)年、『忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣』といった、若い浪士と赤穂藩江戸屋敷奥女中とのラブストーリーを描いた作品などがあるものの、スピンオフといっていい。

 また、映画では令和元(2019)年、討ち入りにかかる予算に翻弄される大石内蔵助(おおいし・くらのすけ)を主人公とした『決算!忠臣蔵』や、来年公開される予定の『身代わり忠臣蔵』もあるが、いずれもコメディーであり、往年の悲劇的なストーリーは色を薄めている。

 さらに、吉良上野介(きら・こうずけのすけ)に斬りかかった罪で切腹した赤穂藩主・浅野内匠頭(あさの・たくみのかみ)が、実は短慮で女性に目がない“暗愚な殿様”だったことも、歴史家の著作を通じ、一般に知られるようになってきた。

 内匠頭は決して悲劇の主人公ではなく、感情に流されて暴挙に走ったあげく家臣を路頭に迷わせた、トンデモない人物だったのだ。この事実が明るみに出たことも、忠臣蔵がテレビから消えつつある要因かもしれない。

 では、内匠頭とはいったいどんな男だったのか、次ページ以降で詳しく解説する。