今年大きな話題を集めたChatGPTをはじめとする生成AI。すでに多くのリスクが挙げられていますが、まだ指摘されていないのが「AIクソ上司」の爆誕です。急激な「人生の序列逆転」の恐怖まで、あと少しかもしれません。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
生成AIには
まだ知られていないリスクがある
昭和の初期、かつて共産主義が出現した当時、その危険性は資本家の既得権益を揺るがすものだと考えられました。共産主義に熱狂した20世紀前半の人々は、まさかその共産主義が労働者の生計や人権を徹底的に苦しめる道具になるとは、みじんも思わなかったものです。
実は百年の時を経て出現した生成AIも、同じ危険をはらんでいます。
生成AIの性能が切り開く未来に多くの人たちが熱狂する一方で、一部の政策者たちが口にする危険性は本質を突いていないかもしれません。
情報の誤りのリスク、著作権侵害のリスク、意図的なフェイクによる大衆扇動のリスク、雇用の減少のリスクなど、すでに想定されているこれらのリスクは、実際に生成AIの生み出すリスク要素であることは間違いありません。しかし、私たちは共産主義の出現のときと同じで、本当の恐怖を見落としているかもしれません。
とはいえ、ここでは人工知能が人類を支配するリスクを持ち出すつもりはありません。人類を支配するほどの人工知能は汎用AIといって、まだその出現は10年以上先の遠い(?)未来です。今、それを心配する必要はないでしょう。
では、生成AIのまだそれほど危険視されていない本当のリスクとはいったい何なのでしょうか? それは「生成AIが人生のゲームバランスを大きく変えてしまう武器になる」ということです。