主人公2:
有能な企画家タイプの部長(Y部長)

 彼をここでは、Y部長と呼びましょう。大企業でエリートコースを歩んできたY部長は、やはり生成AIでその人生を大きく変える経験をします。

 それまでのY部長のビジネスパーソン人生は、指揮官としてのスキルを磨き続けることでエリートの序列を確保してきました。当然のことながら大企業の仕事は、一人では成り立ちません。多くの人たちとコンセンサスを築きながら、大組織を動かしていく。それがY部長の現在の地位を作り上げたスキルでした。

 ところが生成AIと出合って、Y部長はあることに気づきます。自分でできることの範囲が劇的に広がっているのです。

 物語ではこのようなプロットを用意しています。重要な新製品の発表イベントを翌日に控えた前日の深夜、Y部長の部署では大騒動が起きます。入念に準備をしたはずの戦略シナリオが、海外の競合の新製品の発表でガラガラと崩れてしまうのです。

 このまま戦略商品を発表しても、業界からは失笑を買う結果になる。そう危惧するY部長は数人の部下とともに徹夜で翌日のプレゼンテーションプランをがらりと変更しようと動きます。

 広告代理店が用意したデモ動画はボツに、メインとなる商品のプレゼンテーションもボツにして、Y部長は自分のスピーチだけでその場を乗り切ろうとプランを変更します。

 ところが生成AIを駆使するうちに、新しいプレゼンテーション資料も、新しいデモ動画も、そのバックで流れるBGMも、一晩のうちに新しいものが出来上がってしまうという生成AIの魔法をY部長は体験します。

 そこでY部長は気づくのです。自分のような人材を数人集めるだけで、超少数精鋭で巨大ビジネスを操ることができる時代が来たのだと。

 実はこのふたりの主人公が、書籍『「AIクソ上司」の脅威』で世の中に訴えようとした、近未来の人生のゲームバランス変化のアイデアを象徴しています。