資生堂Photo:VCG/gettyimages

注目度の高い業界や企業の最新決算を分析する『最新決算 プロの目』。今回は化粧品・トイレタリー業界の注目2社、資生堂と花王を取り上げる。「処理水放出」による影響が不安視されたトップ企業2社だが、直近の四半期決算では明暗が分かれた。中国リスクが顕在化した決算となった資生堂の復活のタイミングは?9四半期ぶりに増益となった花王に見えた「復活の芽」とは?SMBC日興証券の山中志真アナリストに2社の四半期決算と中長期の戦略を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

資生堂は中国事業が急失速
2期連続で業績を下方修正

 資生堂は、中国事業の動向が業績に与える影響度が高い企業ではあるが、23年12月期の第3四半期決算では、中国関連の需要後退が想定以上だった。営業利益計画が4割減額され、減収局面の利益減少幅が大きかった。

 上期(1~6月)までは、期初計画に対して好調だった。中国事業は復調傾向にあり、第3四半期決算は収益性の高い免税店の在庫調整が終わるか否かに注目していた。

 だが、発表された第3四半期決算では、22年度にコア営業利益の7割を占めた免税店などのトラベルリテールの店頭販売に回復の兆しはなく、処理水放出後の日本製品に対する買い控えで中国事業が後退。7~9月期の中国事業は実質9%減収となった。

 今後についても、ダブルイレブン(W11)という中国の大きなEC商戦での苦戦を見越して、期初の会社計画のコア営業利益600億円を350億円に減額修正。22年度に続き、業績の下方修正を余儀なくされた。

 株価も第3四半期決算発表後、対TOPIXで20%程度下回っている(12月19日時点)。事前予想に対して、厳しい決算になってしまった。

 一方、資生堂が進める日本事業の構造改革の効果には期待している。コロナ禍で低採算事業やブランドを売却する一方、強みを持つ高価格帯のスキンケアを強化して、事業ポートフォリオの収益性が改善しているからだ。

次ページでは山中氏が資生堂、花王の決算の数字に加えて、各ブランドの強みや課題、各社の戦略について分析。足元は苦しい資生堂を中長期では評価する理由や、花王が苦境に陥った原因とV字回復の可能性など、2社の現状と今後について忖度なく解説する。